菅首相は施政方針演説で、五輪開催までに新型コロナの終息を約束したのか?
18日午後に召集された第204通常国会で菅首相は就任初の施政方針演説を行ったが、いつものことながら美辞麗句の大盛で、今日本が新型コロナ禍の大変な時期にあるということを忘れさせる演説だった。
(2021年1月19日 ABCテレビ「羽鳥モーニングショー」より)
また菅首相演説の途中で時々入る自民党議員と思われる「合いの手」には、ここが国会とは思えぬ雰囲気を感じてしまう。
それはちょうどトランプ大統領が演説した時に後方の支持者がよく叫ぶ「ウォー」と似たものを感じるのである。
国会議場はいつから球場のアルプス応援席になったのか。
この菅首相の演説内容をあるメディアが検証したところによると、新型コロナに関した演説時間4分強に対して、脱炭素化とデジタル改革に関したものは17分超に及んだという。
あのGoToトラベルについては一言も触れなかった。
今日本や世界が直面している大きな危機は、新型コロナウイルス、あるいはその変異型による感染拡大である。
今はどの国も、いかに新型コロナを終息させるかに大きなウェイトを置いている。
ここで間違えてはならない、収束ではなく終息である。
しかしながら昨日の菅首相の演説は、新型コロナ収束に若干触れはしたものの、全体は将来に向かっての百花繚乱の美辞麗句で飾られたものであった。
この演説を聞いていると、新型コロナ禍?どこの国の話?と勘違いしそうになった施政方針演説であった。
もちろん新型コロナ以外の将来の計画は大事であろうし、国家というものはどういう状況下であっても、一時も手を抜かせない政策はあるものである。
しかしながら日本が今どういう状況にあるかを認識していれば、何を最優先にして政策を進めていけば良いかは誰にもわかるはず。
そうであれば どういうことに演説の時間を大きく割き、国民に訴えればよいかは明らかである。
新型コロナの終息、それが実現しなければグリーン政策もデジタル改革も意味のないものになってしまう。
菅首相は演説のなかで、この夏の東京五輪開催について「人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証として」と述べた。
菅首相は、新型コロナウイルスに「打ち勝った証」として東京五輪を開催するという
(2021年1月19日 ABCテレビ「羽鳥モーニングショー」より)
何をもって「打ち勝った証」とするのか、そのあいまいさはあるものの、ここでは当然「新型コロナの終息(まさか収束ではなかろう)」と解釈するのが妥当だろう。
そうだとすれば、東京五輪開催の時には全世界で新型コロナは完全に終息している、というふうに聞こえる。
なぜ全世界かと言えばオリンピックは日本だけで行うものではないからである。
逆に、もし新型コロナに「打ち勝たなければ(終息しなければ)東京五輪開催はしない」という意味にもなる。
そうであれば菅首相はこの演説で「7月の東京五輪開催までに新型コロナの終息を約束した」ということになるが、菅首相ははたしてそのような意味で言ったのか?
もしそうであればこれほど歓迎されることはあるまい。
だが現実は非常に厳しい。
東京五輪開催をがむしゃらに進めるあまり、新型コロナ終息に関して何の根拠も具体策もなしにこのようなことを口にしたとすればあまりにも軽薄である。
施政者は、美辞麗句で演説内容を飾ろうとすると、時として大きな誤解を招くことを肝に銘じてほしいものである。