「何があってもやる」という思想の恐ろしさを思い起こせ!
自民党の二階俊博幹事長が15日民放の番組収録で新型コロナの感染拡大が収まらないようであれば、東京五輪・パラリンピックの開催中止も選択肢の一つと述べたことについて波紋が拡がっている。
「中止を選択肢に加えるべきだ」との15日の発言
(2021年4月16日 ABCテレビ「羽鳥モーニングショー」より)
一部では「何を今さら」「判断遅すぎ」といった声もあるが、常識的に考えれば二階幹事長のこの発言は「当然だ」との声も多い。
発言のトーンは少し落ちたが、中止の選択は捨てていない
(2021年4月16日 ABCテレビ「羽鳥モーニングショー」より)
その後、二階幹事長は上の発言に対する修正コメントを公開したが、そこでも「何が何でもオリンピックとパラリンピックを開催するかと問われたら、それは違う」という意味で申し上げた、と述べている。
東京五輪開催まで100日を切り「何を今さら」「遅すぎる」といった声もあるが、このまま突き進めばどうなるか。
「ここまで来たら何があってもやるしかない」といった考えは、太平洋戦争を引き起こし国民に大きな犠牲を強いて敗戦したあの大本営の思想そのものである。
開催国である日本国内で論じると関係者の意見はどうしても強行開催という方向に考えが傾くが、新型コロナの感染拡大が収まらない地で東京五輪・パラリンピックが開催されることに外国ではどう思っているのだろうか。
12日付のニュヨーク・タイムズ紙は、新型コロナの感染拡大が収まらず、ワクチン接種の実施率が先進国でも最下位にある日本が東京五輪を開催するのは「最悪のタイミング」だと評している。
そしてこのことは、日本と世界にとって「一大感染イベント」になる可能性があると報じている。
また14日に公開された英医学誌BMJ(ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル)は、今夏の東京五輪・パラリンピックについて、「今年の夏に開催する計画は緊急に再考されなければならない」と訴える論文を掲載した(ロンドン時事)。
そしてこの論文は「他のアジア太平洋の国々と異なり、日本は新型コロナウイルスを封じ込めていない」とし、さらに「限定的な検査能力とワクチン展開の遅れは、政治的指導力の欠如に起因している」と批判している。
さらに「逼迫(ひっぱく)する医療体制と非効率な検査・追跡・隔離の仕組みは、大会を安全に開催し、大量動員によって起きる感染拡大を封じ込める日本の能力を大きく損なうだろう」と懸念を示している。
東京五輪の開催日である7月23日に新型コロナの感染がどのような状況になっているのかを今予想することは難しい。
しかし、何事も最悪のことを予想しながら方針を決めることは鉄則である。
新型コロナの感染拡大に対して日本が今までどのような対応をとってきたかをみれば、それは決して万人が安心できるものではないだろうことは現状をみれば容易に想像できる。
今夏の東京五輪・パラリンピックの開催について、中止あるいは再延期という選択肢は現状のような新型コロナ感染拡大の下では常に念頭に置いておくべきだと考えるのは当然だろう。