東京五輪開催は日本のコロナ禍をより深刻なものにしてしまう
米国医学誌「ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」は、今夏の東京五輪の開催について「これまでの教訓が生かされていない」として、「聖火が灯る2カ月を切った今、開催中止するのが最も安全な選択肢かもしれない」とする論文を25日に掲載した。
「開催中止が最も安全な選択肢」と論文には記されている
(いずれも 2021年5月28日 MBSテレビ「ひるおび」より)
それによれば
① 開催延期を決めた去年より感染は広がっている
② 日本のワクチンの接種率は約5%でOECD加盟国では最も低い
③ IOCによる開催決定は最善の科学的根拠に基づいていない
➃ 組織員会やIOCが決めた行動規範(プレイブック)は科学的なリスク評価に基づ
いていない
などを挙げ「開催中止するのが最も安全な選択肢かもしれない」と締めくくっている。
この論文ついて、組織委員会の武藤敏郎事務総長は「内容は確認していない」「コメントは控えたい」と答えた。
(2021年5月28日 MBSテレビ「ひるおび」より)
ニュージーランドのマイケル・ベイカー教授は、「パンデミックの最中に五輪を強行開催することは馬鹿げており、多くの人命が犠牲になるだろう」と言っている。
コロナ禍での開催は馬鹿げている、とベイカー氏
(2021年5月28日 MBSテレビ「ひるおび」より)
同氏はその理由として、五輪を開催することは外国から多くの選手やその関係者などの渡航者が入国することが必然で、そしてそれらの人たちは特定の場所に大勢集まって大規模イベントが行われることを意味しており、このことはコロナの感染予防・防止と相反する行動だと批判しているのである。
コロナ禍対策と五輪開催は矛盾する、とも言う
(2021年5月28日 MBSテレビ「ひるおび」より)
一方27日の共同通信によれば、IOCのバウンド委員は東京五輪について「アルマゲドン(世界最終戦争)でもない限り、実施できる」と言い、「何が問題なのか」とも付け加えている。
「アルマゲドン」と比べなければ、五輪開催の正当性を言えないとは・・・
深刻なコロナ禍にある日本で強行開催されるリスクをより少なく見せるために、「アルマゲドン」という言葉を持ち出して比較したということは、逆に東京五輪が非常に危険な環境で行われようとする証(あかし)以外の何物でもない。
このような中、IOCは東京五輪の選手らに提出してもらう参加同意書に新型コロナウイルス感染症や猛暑による「健康被害」は自己責任とするを文面を加えたことが分かった。
同意書は各五輪大会で提出が義務付けられているが、今回の同意書には「重篤な身体への影響や死亡に至る可能性」などの文言が含まれているという。
今までの各大会の参加同意書には「重篤」や「死亡」の文言記載は無かったというから、収束には程遠いコロナ禍の中で強行開催されようとする東京五輪がどれほど異常な事か、このことからでも読み取れる。
IOCだとか、開催国だとか、組織委員会だとか、そういうことは抜きにして、いま全世界で最も優先して取り組まねばならないことは新型コロナの収束ではなかろうか。
このようなときでも各国でいろいろなスポーツイベントが厳格な対策の中で行われていることは承知している。
しかし、これらのイベントとオリンピックはスケールが違う。
オリンピックと小規模なイベントを比較しても意味はない。
そういうことを考えれば、新型コロナの感染予防の対策に多くの人的・物的資源を必要としながら、一方では東京五輪というイベント開催のために同じ資源を奪い合って、コロナ禍の日本により逼迫した状況を生み出すのであれば、東京五輪開催は明らかに新型コロナ感染対策の大きな障害になる、と言いたいのである。