コロナ禍の日本で、政府は今何を優先すべきか

 政府の新型コロナ分科会の尾身会長は国会で、政府がコロナ禍のもと東京五輪を強行開催しようとしていることに大きな懸念を示した。

 

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         (2021年6月2日 BSーTBSテレビ「報道1930」より)

 

 2日の衆院厚労委員会では「今の状況で五輪開催は普通はない」と述べ、同日の内閣委員会ではパブリックビューイングについて「わざわざ感染リスクを高めるようなことだ」と語り、組織委員会が選手村での飲酒を許容したことについても「(国民の)理解を得られない」と批判した。

 

 尾身会長は3日の参院厚労委員会においても、「五輪は普通のイベントとは規模が違う」「当然人の流れが生まれる」「お盆の帰省、連休と重なる」などと懸念を示した。

 

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        (2021年6月3日 ABCテレビ「羽鳥モーニングショー」より) 

 

 尾身会長のこのような一連の発言は、純粋に科学的見地から述べられたものだと思うが、いまだに新型コロナの感染者数が高止まりで、最近はインド株や新たに感染力が強いと言われる英国型とインド型が融合したような変異株に感染した患者が見られることに対し、今は何をさておいてもこれらの新型コロナ感染拡大を阻止し、収束させるべき全力を注ぐのが政府の最優先事項ではないのかと思う。

 

 新型コロナ感染拡大対策を唱えながら、その一方ではそれと逆行するような五輪開催準備に多大な人的・物的資源を注ぐ政府のやり方は明らかに矛盾している。

 

 このような政府の矛盾したやり方を長く続けていることに危惧を抱いて尾身会長は今回の発言をされたものだと思う。

 

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        (2021年6月3日 ABCテレビ「羽鳥モーニングショー」より)

 

 五輪を中止した場合、開催予定であった国には開催都市契約の違反で賠償が発生し、それは約6400億円以上、場合によっては1兆円にもなるという情報もあるが、そうなると以後の五輪開催国に立候補する国は少なくなるであろうともいう。

 

 今回の東京五輪は新型コロナというパンデミックに襲われた予想不可能な出来事である。
 このような不可抗力な出来事で五輪の開催が不可能になった場合、その責をすべて開催国に押し付けることには無理がある。

 

 巨額の賠償金のことはさておき、今度の東京五輪が強行開催されても、あるいは中止になったとしても、いずれにしてもその後のオリンピックのあり方、そしてIOCの体質に大きな影響を及ぼすことは避けられないだろう。

 

 東京五輪をきっかけにして「ぼったくり男爵」あるは「はったり男爵」が居るといわれたIOCが自らその体質改善を図らなければ、以後のオリンピックはオリンピック憲章を見失ってしまった単なる金儲けのワールド興行屋としか見られないだろう。