コロナ禍での東京五輪の強行開催は国家の危機管理として危険な選択である
新型コロナの感染者数が減少しつつもそれが高止まりの状態である。にもかかわらず、今夏の東京五輪・パラリンピックは政府の思惑通りに強行開催されそうな情勢である。
五輪開催中に感染爆発などで多くの感染者が出ない限り、閉会後に政府は「五輪開催は大成功だった」と吹聴して回るだろう。
たとえ開催期間中に日本国内のあちこちで多少の感染者増が起きたとしても、そんなことは政府は気にもかけまい。
それは、五輪開催中は多くの国民やマスコミは五輪に目を向けてしまい、五輪の興奮に酔いしれてしまってコロナ感染者増の情報などは雲散霧消してしまうだろう、と政府は思っているからだ。
開催されれば、マスコミなどで毎日熱狂的に流される五輪報道に国民の間では五輪開催に疑問を挟む声は小さくなり、「五輪開催成功」という声が聞かれるかもしれない。
国内にそういう空気が生まれるであろうことを読んだ菅政権はパラリンピック終了直後に衆議院を解散・総選挙することを目論んだのだろう。
一か八かの選択は国家元首として最悪
(2021年6月19日 ABCテレビ「正義のミカタ」より)
菅首相が9月初旬に衆議院を解散し、10月初めに衆議院総選挙/投開票、そして自民党総裁選で引き続き政権を維持しようとして、今夏の東京五輪を最大限利用しようとしていることは間違いない。
しかし、東京五輪開催中に新型コロナの感染爆発さえ起きなかったら五輪開催は正しかった、と言えるのだろうか。
そうではない。
専門家も言っているが、呼吸器系に疾患を及ぼすウイルスは高温多湿の状況下ではその活動が弱まることが知られている。
夏にインフルエンザなど風邪に罹ることが少ないのはそのためである。
新型コロナウイルスの性質がいまだ不明な点もあるが、新型コロナも高温多湿で活動が鈍る性質を持つことは推測される。
五輪が閉会した秋以降つまり10月から11月にかけて強行開催した五輪の影響がみられるかもしれないのだ。
五輪開催で多様な変異型ウイルスが日本国内に持ち込まれ、あるいは外国から持ち込まれたウイルスが変異を起こし、東京株ウイルスとなるかもしれない。
この時点では高温多湿のために十分な感染力を持つまでに至らなかったウイルスも、秋口になって活動が活発になれば感染爆発を起こす恐れは十分ある。
そんな新型コロナウイルスの生存期間は以下の通りである。
新型コロナウイルスの生存期間
コピー用紙、ティッシュペーパー 3時間
エアロゾル 4時間
銅 4時間
段ボール表面 24時間
プラスチック、ステンレス 2~3日間
紙幣 4日間
サージカルマスク(外側) 約7日間
これだけを見ればウイルスはこの期間ですぐに死滅してしまうのではないか、と思われそうだがそうではない。
ドアの取っ手やエレベーターのボタンなどプラスチックやステンレスなどに付いたウイルスは2~3日間生存しているのである。
それに手を触れた人がその手を口元を触れば容易に感染する。
もし感染はしているが発症していない感染者の体内で増殖した新たなウイルスが感染者の手を介して物に触れる。そうすれば上記の生存期間を超えてウイルスはつぎつぎと拡散することになる。
五輪開催で選手や役員そしてボランティアたちなど多くの人が、一切物に触れなくて毎日を過ごせるだろうか。もちろんそのために皆がよく触れる物は消毒するだろうが
100%完全ではなかろう。
感染力が強く免疫力を低下させるといわれる変異型ウイルス=インド株のウイルスは生存期間が従来株のウイルスと比べ長いのかもしれない。
このようなことを考えれば、たとえ東京五輪開催期間中に選手団や五輪関係者にコロナ感染者が出なかったとしても、また観客や国内に極端な感染者増がみられなかったとしても、それだけで五輪開催による感染爆発の影響は無かったとする証にはならない。
東京五輪・パラリンピックが終わって気候が高温多湿から冷温乾燥へと向かう秋口に日本の新型コレラ感染がどのような状況になっているか、このことを確認しなければ今夏の東京五輪・パラリンピック開催ははたして問題無かったのか、あるいは間違っていたかを判断できない。
東京五輪が無事終われば・・との思惑で強行開催
(2021年6月19日 ABCテレビ「正義のミカタ」より)
秋の衆院解散総選挙で菅政権を評価しなければならないのであれば、仮に東京五輪が無事に終わったとしても、コロナ禍での強行開催は国家の危機管理として非常に危険な選択であろうことは確かだ、とだけは言える。