衆院選、低い投票率では民意を正しく反映したものとは言えない
第49回衆院選は多くの人の予想を覆す結果を残して全議席が確定した。
今朝(11月2日)の朝刊には今回の衆院選小選挙区の投票率が55.93%だったと載っており、それは戦後3番目の低いものだったという。
実に有権者数の4割強が棄権したことになる。
ちなみに世界「議員選挙投票率」ランキングによれば日本の投票率は100位にも入っていない。
順位 国 名 議員選挙率
1位 ベトナム 99.26%
3位 シンガポール 95.81%
8位 オーストラリア 91.89%
18位 スウェーデン 87.18%
24位 デンマーク 84.60%
32位 ニュージーランド 82.24%
33位 オランダ 81.93%
52位 ドイツ 76.15%
58位 台湾 74.86%
59位 タイ 74.69%
60位 フィリピン 74.31%
66位 イタリア 72.93%
74位 スペイン 71.76%
87位 カナダ 67.65%
89位 イギリス 67.55%
92位 インド 67.40%
97位 韓国 66.21%
139位 日本 53.68%
出所:民主主義・選挙支援国際研究所
(The International Institute for Democracy and Electoral Assistance)
この衆院選の結果を得て、与党はさらに強引な国会運営を進めていくだろう、との危惧を抱く。
多くの識者やマスコミの事前の予想を覆して今回の衆院選がこのような結果になったのはなぜか?
識者やマスコミは、主たる原因を立憲民主党と共産党が共闘を組んだことを指摘している。
今回の衆院選で立憲民主党(以下、立民)が共産党と共闘を組んだことに一部の連合の人たちの反感を買ったことは確かであろう。
そして共闘する段階でそれに反感を持つ人たちへの説明が不十分だったこともあるだろう。
しかし、だからと言って「野党共闘」を「悪」と決めつけることは極端だろう。
ただ、この衆院選が公示されて共闘した野党の幹部の演説の中で「政権交代」という言葉が唐突に出てきたことに私は大きな違和感を持ったことは否めない。
今の野党に政権を担う実力には多少疑問があるのに、いきなり「政権交代」とは今の時点ではいささか度が外れたものではないのか。
この言葉はそのような状況が整うその時まで使うべきではなかったと思う。
新型コロナ感染者増加がようやく治まりかけた時に、いきなり「政権交代」という言葉を軽々しく使ったことに反発を抱いた有権者もいるだろう。
あの東京五輪開催中の新型コロナ感染者数が爆発的増加したことがウソのように今は新型コロナの感染者数が減少し、さらに飲食店への営業規制が緩和されてきたが、新型コロナの第5波の猛威を経験した人たちのモヤモヤはいまだ晴れない状態である。
今までの政府の後手後手のコロナ対策に業を煮やした有権者がその怒りを衆院選でぶつけようと思っていた矢先、「政権交代」という言葉を耳にしたとたん、「今はそれどころではない。コロナ禍によって営業不振に陥いったり、職を失って生活困窮になっているのを国はどうにかしてほしい」と思ったことであろう
今回の衆院選は「与党が勝った」「野党が負けた」「維新が議席を増やした」という単純なものではなく、低い投票率でも政権担当が決まってしまうという、国民の民意を正しく反映できない摩訶不思議な日本の政治を露呈しているようにも思えるのである。