なぜカジノ法案の成立を急いだ?
あれほど反対姿勢を見せていた民進党の中での対応が乱れて、その修正案を容認したことも腑に落ちない。
民進党は、審議時間が短いとか、安易な手法で採決しようとしていると与党を批判していたが、それと裏腹にすんなりと委員会の採決に応じているのである。
なんとも理解しがたい野党ではある。
とはいっても政権与党の居心地の良さを公明党は忘れることができないだろうが、自主投票という状況はしばしば起きるかもしれない。
それでは来年1月の衆院解散はあるのか、今日現在ではその公算は強いと私は見ている。
それを左右するのは今日の日露首脳会談の結果と、12月末の安倍首相のハワイ訪問時の状況次第である。
12月5日、日露首脳会談の成果が芳しくないとみた政府はいきなり安倍首相の真珠湾慰霊訪問を発表した。
もし日露首脳会談の結果が芳しくないものだったら、真珠湾訪問ということで日露首脳会談の失点をカバーしようとしているのではないか。
それはこの2~3ヶ月の政府と安倍首相の言動を見ていればおおよそ見当がつく。
米国でトランプ氏の次期大統領が確実となったとたんにプーチン大統領が安倍首相からトランプ氏に顔を向け始めたのを知り、日露首脳会談が日本にとって無収穫な結果に終わるかもしれないと政府は危惧した。
それは11月20日のペルーにおける安倍首相とプーチン大統領の会談によってますます確実なものになった。
ペルーでのASEAN会議に出席する前の11月17日、安倍首相はトランプ次期大統領に会い、TPPについて再考するようお願いしたにもかかわらず、その舌の根も乾かない11月21日、トランプ氏はTPPを離脱することを明言した。
安倍首相はメンツをつぶされた格好である。
安倍首相のハワイ訪問の発表はその後の12月5日だった。
最初一部のマスコミは「現職」の総理大臣としては初めての「真珠湾慰霊訪問」という触れ込みだったが、実は65年前に吉田首相がいた。
この点でも安倍首相のハワイ訪問のニュースは精彩を欠くものとなった。
いずれにしても今回のカジノ法案成立の裏側は、賭博によって日本経済を牽引させるという、風が吹けば桶屋が儲かるような理由を喧伝しているが実態は単なる政党間の思惑が交錯して、あれよあれよと言っている間に成立してしまったように思えるのである。
カジノ法案がプログラム法案だということは十分わかっている。
実際に施行されるまでいくつかの段階を踏まねばならぬが、どんなに急いでも東京五輪には間に合わないという。
明日、明後日のことではないとしても、今回のカジノ法案の成立は日本において現在では禁止されている「賭博」の解禁という最初の扉をこじ開けたということだけは確かである。
しかし、それができるのは現国会議員の半分も居るかどうか、無責任である。