「テロ等準備罪」はどのように見られているか

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 5月23日、「テロ等準備罪」法案が自民・公明両党と日本維新の会などの賛成多数により衆議院を通過した。

 政府は、東京オリンピック開催を控えてTOC条約(国際組織犯罪防止条約)を早期に締結するためと言ってる。

 さらに政府は、TOC条約はすでに世界187の国と地域が締結していることもこの法案成立を急ぐ理由に挙げている。


 この「テロ等準備罪」法案にはプライバシーとの関連において突き詰めて審議されていない部分が相当あり、もしこのままで成立するとその運用方法に大きな懸念があると感じるのは私だけではあるまい。

 突き詰めて審議しないであいまいな部分を残すというのは、この法案の対象範囲を柔軟にさせておきたいという意図が隠されているような気がする。

 「共謀罪」がいつの間にか「テロ等準備罪」という言葉に置き換わって報道されているのも不審である。

 調べるとそれぞれに理屈をつけて、政治・宗教目的の行為を対象から外すことをわざとぼかしているようにみえる。

 ということは、政権に不利と判断された政治活動や宗教活動が「テロ等準備罪」の対象になるという可能性を残しているのである。

 どんなに人に安全で装備が万全だと宣伝している車を開発しても、運転する者が悪用したならば、それはたちまち凶器となるのに似ている。


 たとえ187の国と地域がTOC条約を締結しているとしても、日本との国情の違いは当然考慮されなければならない。

 仮に十分審議尽くされた立派な法案であっても、運用いかんによってはたちまち悪法にもなることもある。

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 5月18日、国連人権理事会の特別報告者ジョセフ・ケナタッチ氏は、この「テロ等準備罪」などを含む組織犯罪処罰法改正案について「プライバシーを極端に侵害するおそれがある」という書簡を安倍首相あてに送って懸念を示した。

 それに対して22日に菅官房長官が記者会見で抗議した日本政府の対応を、ジョセフ・ケナタッチ氏は「中身のないただの怒り」と批判したという。

 私も国会中継で政府の空疎な内容の反論は幾度も見聞きしている。


 こういう情報がある。

 ☆2017年の世界の「報道の自由度」ランキングで日本は72位である。

 昨年2月に高市早苗総務相は、政治的公平性を欠く放送を繰り返した場合、電波停止を命じる可能性に言及したが、こういう発言は欧米なら政権がひっくり返るほど重大なことであることに日本の政権は何も感じていない。

 ☆2016年の世界幸福度ランキングで日本は53位である。

 ☆一人当たりの名目GDPランキングで日本は27位である。
 日本の名目GDPランキングは世界3位なのに一人当たりにするとこんなもので、日本国民は決して豊かではない。

 ☆教育水準ランキングで日本は26位である。

 とどめは次の2項目、すなわち

 ☆男女格差ランキングで日本は101位である。

 いくら政府が男女平等格差是正と叫んでも、形ばかりの政策で実態はほとんど変わらない。

 そして唯一、1位を占めたのが

 ☆平均寿命の高い国ランキングで日本は1位である。

 こういうのは2番でも良かったのに・・・。


 日本は名目GDP世界第三位で、かつG7の一員で、G20などの国際会議に名を連ねる大国だと自信過剰になっているようだが、それは少し慎んだほうがよい。

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 現在の日本が世界のどういう位置にあるのかということ、そして日本が世界からどのような評価を受けているのかということを常に意識することも必要であろう。

 アフリカのある国のことを思えば、あるいは近隣のある国のことを思えば、日本ほど自由で民主的な国家はないと思いがちだがそれは違う。

 冷たい水に長時間浸かっていれば水の冷たさも感じなくなってしまうのだ。

 今や外国からも批判されている「テロ等準備罪」法案を性急に成立させようとするこの国は、日本人が思っているほど自由な国ではないということを今一度考える必要がある。