靴の容器に入ったデザート、どんな味がした?
靴の容器に入ったチョコレートのデザート
(インスタグラム:@segevmosheより)
安倍首相が中東を訪問した時、イスラエルのネタニヤフ首相夫妻との夕食会で「靴の容器に入ったチョコレート」のデザートが提供されたことはご存知であろう。
日本ではあまり大きく報道されなかったが、現地のイスラエルでは「重大な外交的欠礼」との声も上がったそうである。
中東ではとりわけ靴に対しては象徴的な意味を持つ。
以前、イラク訪問中の米国元大統領が靴を投げつけられる事件があった。
アラブ人にとって靴は外部の汚れから足を守ってくれる、つまり靴はさまざまな穢れで汚れきっているという考えから、靴を相手に投げつけるという行為は最大の侮辱なのである。
そういう意味を持つ靴の容器を食卓に載せるという行為は通常では考えられない。
このデザートを考案したシェフによれば、日本人は靴を脱いで畳に上がる習慣があるということから靴型の容器を思いついたというが、靴を脱ぐ習慣と靴型の容器にチョコレートを盛ってテーブルに載せるという、その脈絡がわからない。
なぜ日本では家に上がる時に靴を脱ぐかというと、それはアラブ人と同じように、足を汚れから守った靴で家の中を汚さないためである。
ネタニヤフ首相夫妻のテーブルの前にも同じように靴の容器に入ったデザートが並んでいたというから、日本の安倍首相に対してわざとしたことではないだろう、という意見もある。
だからこのことに神経質になる必要はない、という日本国内の意見もあるが、私はそれは安易すぎると思う。
それは、次の理由からである。
チャップリン映画『黄金狂時代』に次のような一幕がある。
空腹のあまり自分の古い靴を礼儀正しく食べる主人公が、黄金を求めて狂奔する人間を描いたシーンである。
靴の容器に入ったデザートを提供したシェフは、富だけを求めて狂奔する今の日本の姿を痛烈に皮肉ったのではないか。
夕食会の席上で、靴の容器に入ったデザートを口にしながら、安倍首相はどのようなことをネタニヤフ首相に話したのであろうか。
このデザートが入った靴の容器はイギリス製で「Tom Dixon」の金属製ドアストッパーとして販売されており価格は17,000円、主としてドアストッパーとして使用されるが、ペーパーウェイトとしても利用できるという。
靴の容器に入ったデザートを見た安倍首相が何を思ったのかは知らない。
もし、今回の事が意図的な嫌がらせであったとしても、安倍首相に日本の総理大臣として繊細で知的な能力が働いたとしたら、次のような展開になっていたかもしれない。
食卓に載った靴の容器を目にした安倍首相が穏やかな口調で「中東紛争のストッパーとして、また紛争が広がらないよう、この靴の容器のように少しでも日本がお役に立てれば・・」とネタニヤフ首相に述べた。
翌朝のイスラエルの新聞には、この夕食会は日本の首相の機転の利いたスマートな会話で始まった、として評価する記事が載ったであろうに。
「ウソつき政権」と揶揄される安倍政権、とても無理ですね。