政府による東京高検検事長の定年延長は司法の独立性を脅かす

 政府が2月7日に定年を迎えるはずの東京高検の黒川検事長の定年延長を閣議決定した。

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          (2020年2月6日 MBSテレビ「ひるおび」より)

 このような異例な人事に検察OBらは「聞いたことがない」「検察の独立性が脅かされる」などと述べている。

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          (2020年2月6日 MBSテレビ「ひるおび」より)

 安倍政権に近いといわれる黒川氏が検察のトップの検事総長に就けばどうなるか。

 今後さらに安倍政権に都合の良いことが検察によって行なわれる恐れが増すことを意味する。

 

 検察が今まで安倍政権に忖度したようなこと、例えば森友問題において大阪地検特捜部は佐川氏をはじめとする財務省の誰をも不起訴にし、加計問題では政治資金規正法違反容疑で告発された自民党議員らを東京地検特捜部は不起訴処分とした。

 

 森友問題では前理事長の籠池泰典氏と妻の諄子氏は約10か月も拘留された。

 

 異例ともいえるこの長期拘留に籠池氏は「国策拘留」と訴えた。

 

 このような長期の拘留をおこなった大阪地検特捜部が安倍政権にまったく忖度しなかったとは言えまい。

 

 2016年の司法統計によると、容疑者や被告の拘留期間は1ヶ月以内が20%、1月超3ヶ月以内が約60%である。

 

 約300日ぶりに釈放された籠池泰典・諄子夫妻を待っていたのは長年住んでいた家も無くなり、収入も失った毎日だ。

 

 かっては籠池夫妻は安倍夫妻と互いの信条を認め合った仲であり、森友学園においては安倍首相を称えるような斉唱を園児らにさせていたのである。

 

 そういう仲であったにもかかわらず、森友問題が国会で取り上げられたとたん、安倍首相は豹変して籠池夫妻を極悪人に仕立てた。

 

 たとえ国の補助金をだまし取ったという疑いがあるとしても、それまで忠義を尽くしていた家臣がお上に都合の悪い事実を述べたことに激高して、主君がその家臣を市中を引き回したうえで獄門磔を行うようなものだ。

 

 籠池夫妻が異例の長期拘留されたのも、夫妻が長年住み続けていた家が強制競売にかけられて簡単に取り壊されたのも、政権に逆らえばこのようになるぞ、という国民に対する見せしめのような気がする。

 被告の身であるがゆえに、籠池夫妻は働くことができず現在無収入である。

 

 国家のあらゆる権力を手中にしたものが一般人の腕を捻じ曲げるのは容易である。

 

 日本は法治国家三権分立が確立した国である(と思う)。

 

 司法・立法・行政がそれぞれに独立して互いに干渉することが無いようにして国民の権利と自由を保障しなければならない。

 

 しかし、今回のように政府が違法とも思える東京高検検事長の定年延長を行うことは司法権の独立性を著しく損なうものである。

 

 このような手法がまかり通れば司法の独立性が失われ、政府の意に逆らう者が検察の手によって排除される可能性が高くなるだろう。

 

 まるでどこかの独裁国家のようである。

 

 一見、民主的な政治を行っているようなふりをして、国民にわからぬように言葉や表現でカモフラージュして独裁国家のステップを上っていく政策を決めていく政権に、私たちは早く気づかなければこの先取り返しのつかない事になるだろう。