日本政府の対応は場当たり的~新型コロナウィルス
新型コロナウィルスによる感染者が予想以上に広がっている。
一部の識者やマスコミは、新型コロナウィルスはこれまでのインフルエンザのウィルスと同じようなものだから、それに準じた対策をしていれば恐れることはない、と非常に抑制した表現をしているが本当にそうだろうか。
先日、武漢でこの新型コロナウィルスの感染警鐘を鳴らしていた30歳代の若い医師が自らも感染し、死亡した。
これはこの新型コロナウィルスは必ずしも高齢者や他の疾患を併せ持つ弱者だけを標的にしていないということである。
新型コロナウィルスがどういう特徴を持ち、人間にどういう症状を起こすのか、まだはっきりとはわかっていない。
そのような段階で日本政府が、必要以上に恐れるな、冷静に対応を、と言われても責任を回避した慰めのようにしか聞こえないのである。
1月に中国・武漢で新型コロナウィルスによると思われる肺炎が流行していると報じられた時、各国は次のような厳しい対応をとった。
アメリカ
アメリカ政府は1月31日、「公衆衛生の緊急事態」を宣言
武漢から避難したアメリカ人を空軍基地に2週間隔離
中国に滞在歴のある外国人を入国拒否した
イギリス
武漢からの帰国者は市外からかなり離れた空軍基地に2週間隔離
国立病院には感染者の大量死を予想してマニュアルが配られた
オーストラリア
武漢に滞在していた自国民をチャーター機で帰国させたが、そのうち243人を2400㎞離れたクリスマス島に最大2週間隔離
ロシア
中国との国境検問所をすべて閉鎖
武漢から退避した国民をシベリヤのキャンプ地に2週間隔離
一方、日本政府が取った対応はというと、ここに記すことでもあるまい。
武漢での新型コロナウィルスの感染が報じられた後も中国からの訪日観光客を無条件に続々受け入れ、帰国した者をどうするかという具体的な方策も決まっていない段階でチャーター機を飛ばし、国内に着いてから隔離するホテルを探すという混乱の中、こともあろうに住宅地に近い民間ホテルを決めるという慌てぶりである。
そういう中で帰国者が滞在していた国立保健医療科学院で対応していた内閣官房職員が幾日も経たないうちに自殺した。
おそらく政府の方針と帰国者の非難に挟まれて、心労が頂点に達したとしか思えない。
後手後手に回る政府の対応の犠牲者であるというほかない。
痛ましいことである。
またクルーズ船では新たに39人と検疫官1人の感染者が確認されたという。
39人の感染者の中には10代の女性が含まれていて、10代の感染者は初めてだという。
このことは、この新型コロナウィルスは決してなめてかかってはならないということを示している。
突然の災禍に襲われた時、実情はどうなのかを政府は国民にいち早く知らせる義務があり、誇大も矮小もしてならないことをわきまえてもらうことが、このような災禍を早期に収束させる策であることを日本政府は知るべきである。
それを基本に置けば、たとえそのために厳しい対策を取らざるを得なくなったとしても国民の理解を得られるだろう。
今の日本政府の対応を見ると、新たな事実が判明したときにそれのみの対応をするだけで後手後手の様相を呈している。
なぜ日本政府はもう少し先を読まないのか。
読むことができないのか。
「想定外」だったとまた言うのだろうか。
このような災禍が起きた時、それによって考えられる最悪の事態を予想して手を打つことが最少の被害で済ますことができる唯一の方法である。
10日、ロシアの外務省は今回のクルーズ船で感染者が広がっていることに対してこんなこと言っている。
「日本の対応は混沌(こんとん)として場当たり的だ」と。
苦難の時こそ真価が問われる。
日本政府には二度と「想定外」という言葉を使わせてはなるまい。