この記者会見は一体何なのか?
2月29日、安倍首相は新型コロナウイルスの感染拡大に対する記者会見を行ったが、このような危機における一般論や抽象論を披露しながら今までの対応を自画自賛しただけで、何ら目新しいものはなかった。
我々が知りたいのは、この時になって全国一律に長期の休校を判断した根拠と、それによる現場の様々な問題に対しどのような具体策を用意しているか、である。
それについては何も語らず、ただ「新助成金制度」を創設したとか、「雇用調整助成金」を支給する、はたまた緊急対応策として2700億円の予備費を活用した緊急対応策を策定する、といったことをまるでバラマキのようなニュアンスで語っていたことである。
これらは今スタートしたばかりか、あるいはこれから検討するといった状態である。
27日に政府が小中高の一斉休校の要請をしたときに、それによって生じる現場の種々の問題はどうするのかとの質問に、政府は「走りながら考える」とはよく言えたものだ。
新型コロナウイルスははるか前方を走っているのに・・・。
小中高が一斉休校になった場合、共稼ぎ家庭においては収入の面で、中小企業ではパートアルバイトの確保や休業の面で少なからず損失が発生するだろう。
このことと、今回の一斉休校に至った根拠を政府が示すことは別次元である。
まるで、一斉休校で損した分は政府が面倒をみるから文句を言うな、と言っているように聞こえる。
安倍首相は国会答弁でも、このような記者会見でも「私が・・・」「私の責任において・・・」とよく口にする。
一国の総理大臣が物事を進めるうえで責任を負うのは当然なことで、敢えて発言するのは自己顕示欲の強い表れである。
安倍首相は、「私の責任で・・・」と言っておきながら一方では「目に見えないウイルスとの戦いは政府と国民双方の知恵と工夫が必要」などと、責任の一部を国民に押し付けることを忘れないのはさすがである。
会見の最後で安倍首相は記者たちからの質問を受けたが、その中で「これまでの新型コロナウイルスの対応で改めるようなことがあるか」との問いに対し、安倍首相は実際の経過をざっくりと話しただけで、具体的な回答はなかった。
またほかの記者が続けて質問しようとすると時間が過ぎているとして会見は打ち切られた。
記者会見における記者の質問は国民の代弁だと思っている。
未知のウイルスの感染拡大防止という重大な案件で、それを時間が過ぎている(それも30分もオーバーしていない)と言うだけで会見を打ち切るのは理解できない。
この記者会見で安倍首相が述べた内容は、少なくとも27日に小中高一斉休校要請を出したときに併せて話すべきではなかったか。
「常に最悪の事態を想定して・・・」と何度も口にする安倍首相の言葉がうつろに聞こえるのである。