何のための記者会見?
安倍首相は14日、国内における新型コロナウイルスの感染拡大について官邸で記者会見をしたが、「緊急事態の状況ではない」と示しただけでほかに特段目新しい発言はなかった。
一部報道では、学校の一斉休校で批判を受けたためのこの会見だったというが、すべてが後付けのような理由ばかりだった。
ではなぜ改正特措法の成立を急いだ?
現行の措置法を押しのけて、改正新型インフルエンザ対策特別措置法を強引に成立させたばかりだから、当然今の状況に応じた何らかの緊急事態宣言をするのではないかと思ったが、そうではなかった。
そう思ったのは以下の理由による。
安倍首相は「一斉休校」という緊急事態宣言にも等しいことを専門家の意見も聞かずに唐突に行った。
このことは、緊急事態宣言もせずに安倍首相は独断でこれに類したことを先走って行った、といえるだろう。
安倍首相が唐突に行った「一斉休校」を正当化させるために、改正新型インフルエンザ対策特別措置法を緊急に成立させ、後付けにはなるが14日に緊急事態宣言をしてこの中に「一斉休校」を順法化させるのではないか、と私は思ったのである。
しかし、この日の記者会見で安倍首相はそうはしなかった。
このことで私は数日前に成立した改正新型インフルエンザ対策特別措置法に大きな疑念を抱いた。
安倍政権はこの改正措置法を用いて新型コロナウイルス感染防止を謳いながら、それとはまったく関係のない何らかの政治的緊急事態宣言を行うのではないか。
改正措置法は土地や物の強制収用などがあったとき、不服申し立てがないと識者は言う
確かに改正措置法において国会で西村特措法担当相は「民放テレビ局などは指定しない」と言っているが、安倍政権のことだ、何をどのように解釈して緊急事態宣言を宣言するかわからない。
いわゆる言論統制のようなことが行われる恐れもあるのだ。
この点は私たちも監視しなければならないだろう。
乱用の予防措置としてこのような付帯決議があるが、果たして事前報告だけで十分か?
WHOが「パンデミック」を宣言し、トランプ米大統領が13日国家非常事態を宣言し、各国が非常事態宣言を発表しはじめた。
このようなときに日本が緊急事態宣言をすれば、日本も猛感染国だというレッテルを諸外国から張られるのを政府は恐れたのかもしれない。
会見で安倍首相は、新型コロナウイルスの一万人あたりの国別感染者数を取り上げて諸外国とくらべていかに日本の感染者が少ないかを強調し、日本が新型コロナウイルス感染拡大を上手に抑制しているとして自画自賛していた。
このような比較の仕方は実態を正しく表していない。
それは基本となる感染者数が本当に実態を反映しているのかというと、そうは言えないからである。
それは誰もが等しくPCR検査を受けられる状況にあるか、ということである。
会見で安倍首相は今月中に8000件まで検査能力を増やすというが
実際の検査数の少なさに唖然とする
(2020年3月15日 MBSテレビ「サンデーモーニング」より)
厚労省が13日に発表したものによれば、13日時点でPCR検査実数は日本では1万2060人、韓国は約20万人以上。
また、PCR検査は韓国は1173人あたり1件、日本は実に6万7000人のうち1件しか検査ができていない。
何かといえば医療先進国を自負する日本がどうしてこんなに検査数が少ないのだ。
これについて米ジョンズ・ホプキンス大のジェニファー・ナゾ上席研究員は「(日本の検査の数字は)低い」と述べている。
PCR検査、口ではこういうことを言うが、実際は・・・
日本では色々な理由を付けてPCR検査の入り口を狭め、そのために諸外国と比べて日本のPCR検査数は少なくなり、よって感染者数も少なくなっている、という疑問を日本政府はスルーしているのだ。
ここでも記者からダイアモンド・プリンセス号をはじめとした水際対策についてどう思うかについて問われると安倍首相は「対応が一段落したら検証を行う」と答えるにとどめた。
感染拡大防止で一番重要なことは、感染拡大を抑えられなかったと分かった時点で早急に原因を突き止め、それを次の対策に反映することである。
安倍首相が言うような「政府対応が一段落したら検証を行う」という悠長なものであれば、一段落するまでの間にこのウイルスはしたい放題のことをすることだろう。
何しろウイルスにとって時間は十分あるのだから・・・。