日本の「民度」が新型コロナを収束させた!?
麻生財務大臣が4日の参院財政金融委員会で、新型コロナウイルスによる日本での死者数が欧米より少ないことを問われて「民度のレベルが違う」と発言したことが問題になっている。
この発言について立憲民主党・蓮舫副代表や共産党・志位委員長らは批判している。
一方、麻生大臣の「民度」発言は日本を貶める発言ではない、日本人の清潔感や古くからの習慣が新型コロナ対策に優れていたことを示すものとして、むしろ好感を持ったという意見もある。
「民度」とは、その地域や国の知的・教育・文化の水準の程度を示すというが曖昧なままで使われることもあるという。
麻生大臣はおそらく知的・教育・文化の水準を指して「民度」という言葉を使ったのであろうが、そうすると「お宅のような国と違って日本の知的・教育・文化の水準が高いから」と言ったのに等しい。
こういう不躾な言葉を、一国の副総理兼財務大臣ともあろう者が発言したのである。
発言の捉えようによっては、新型コロナによる死者数が多い相手国を侮辱したのに等しい。
これでは相手も絶句するほかあるまい。
国会や記者会見の場における麻生大臣の今までの発言をみてみると、常に上から目線の発言である。
1979年の衆院選挙に初出馬した麻生氏が支持者に向かって最初に発したのが「下々の皆さん」だった。
政治家となるスタートからこのありさまだった。
作家の五木寛之氏は自身のエッセイで次のようなことを書いている。
金沢という街に魅力を感じていた五木氏は、若いころ金沢を訪れて泊まった宿の主人が持ってきた宿帳を開いて目を疑ったという。
その宿帳には、氏名、住所などありきたりの記入欄の最後に「士族」「平民」という文字が印刷してあった。
その時、五木氏は本気で腹が立ったという。
戦前の話ではない、戦後の昭和28年の夏である。
五木氏は鉛筆で宿帳の欄の「士族」「平民」という文字を棒で消し、「貴族」と書きつけたらしい。
五木氏が「貴族」と記したのは宿屋に対する精いっぱいの皮肉だったのだろう。
その後よく調べると、この宿帳は戦前からのものが残っていて、それを使っていたのだということがわかった。
そのような時期からおよそ四半世紀経った昭和54年の衆院選挙初出馬で当時の麻生氏が、つい「下々の皆さん」と言ったのはまぁ許せるとしても、令和の時代になっても国民という「平民」を見下す「士族」や「貴族」のような発言や態度をとり続けるような大臣が、日本の閣僚として、また政治家として果たしてふさわしいのかどうか。
麻生大臣が問題発言を繰り返すたびにこのような疑問符が付くのである。