このような時にどうして性急に「GoToトラベル」を始めるのか?

 新型コロナウイルス(以下新型コロナ)によって大きな被害を被った観光地や旅行業者を救うという目的の「GoToトラベル」を政府はこの22日から開始するという。

 

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            (2020年7月15日 MBSテレビ「Nスタ」より)

 

 しかし、最近の全国の新型コロナ感染者は増えており、なかでも東京都における新型コロナ感染者は急増しており、16日には感染者が最多の286人を確認した。

 

 そこで政府は16日、この「GoToトラベル」で「東京をその対象外」とする方針を急遽打ち出した。

 

 発表されたこの「東京除外」方針。
 その内容をみると、東京を発着する場合と東京都民が対象外となるようである。

 

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       (2020年7月17日 ABCテレビ「羽鳥モーニングショー」より)

 

 当初開始の予定を前倒した上に、さらに全国的に感染者が急増しているこの時期になぜ政府はそこまでして「GoToトラベル」を強行しようとするのか。

 

 新型コロナの感染を防止しながら、同時に経済も立て直していく、という意見も一見合理性を含んだように見えるが、完璧な感染防止をするということは人的あるいは物的交流がその基本となる経済活動を一部あるいはすべてを停止するということと同じである。

 

 そう考えると、新型コロナ感染防止とこの「GoToトラベル」は完全に相反する政策のような気がしてならない。

 

 政府がこの「GoToトラベル」を強行する裏には別に何か違う意図があるように思えてならないのである。

 

 また東京都が「GoToトラベル」の対象から除外されるということも、これまでの官邸と東京都の摩擦による官邸の私怨が全く影響していないとは言えまい。

 

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       (いずれも 2020年7月17日 ABCテレビ「羽鳥モーニングショー」より)

 

 これが時折、私怨を政策に織り込める安倍政権独特のやり方である。


 
 このような状況の下で「GoToトラベル」の成果を期待するのは到底無理だろう。

 それは新型コロナの感染者が増大しているということだけでなく、この7月初旬に九州地方で起きた大雨、「令和2年7月豪雨」による観光地などの被害である。

 

 九州に限らず、甲信越などの観光地でも甚大な被害を被り、それまでの新型コロナ禍による損失とも重なって復興に大きな痛手となっている。
 
 このような状況のもとで拙速に「GoToトラベル」を始めることにどのような意義を見出せるのか、皆目わからない。

 

 新型コロナ禍によって観光地や旅行業者が経済的に大きな痛手を被っている。
 そのことに疑問を挟む余地はない。

 

 そして「GoToトラベル」によって早く立て直したい気持ちも十分にわかる。

 

 しかし、新型コロナ感染者数の増大が続く今のこの時期、そして「令和2年7月豪雨」による観光地などの被害を考えると果たしてこのプロジェクトの効果があるのかどうか、疑わしいのである。

 

 1兆3500億円もの予算が投じられる巨大プロジェクトの「GoToキャンペーン」。

 もし新型コロナ感染防止策と経済活動を天秤にかけるとすれば、今は何より感染防止策と豪雨による被災者救済を最優先すべきであろう。
 
 政府の発表を聞くと、今度の4連休を「GoToトラベル」のねらい目にしているようだが、そこに最近の新型コロナ感染拡大、そして大雨による被災地を考慮しているのか、怪しいである。

 

 まかり間違えば、感染者が出ていない観光地に「GoToトラベル」キャンペーンで背中を押された無症状の感染者が出かけてしまい、感染拡大を助長することにもなりかねない。

 

 今回の「GoToトラベル」に関して、青森県むつ市の宮下宗一郎市長は、このような時期にこのプロジェクトを実行する前に新型コロナ感染防止に力を注ぐべき、もしそれが出来なければ「(このGoToトラベルの実施は)政府による人災」だと次のように述べている。

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       (2020年7月14日 ABCテレビ「羽鳥モーニングショー」より)

 これは至極当たり前の感情だと思う。

 

 確かに新型コロナ感染による経済活動の不振によって今までと同じ生活や業績を維持するのは困難になるだろう。

 しかし、むつ市の市長が言っているように「命があって健康であれば経済は向上させることはできる」のである。

 

 私たちは、シャンパンを飲むために、あるいは高級ブランデーを飲みたいがために、経済活動が下がっては困る、と思ってはいないか。

 

 生活レベルが下がる、あるいは業績が下がるということに対して、そのことに耐えうる精神力があれば乗り越えることができるものである。

 

 そのためには命と健康が第一なのである。
 その命が危うくなれば、何ひとつできないのだ。

 

 新型コロナ感染拡大が現実に起きている今、どういう政策を最優先すべきなのか、答えは一目瞭然であろう。