安倍路線を踏襲する菅政権下では役人の「忖度」がますます増えるだろう

 9月14日、自民党新総裁は菅義偉氏に決まった。

                        自民党総裁選結果 
                      国会議員票  地方票   合計
                石破氏     26       42    68
                菅氏     288       89   377    
                岸田氏     79       10    89 
               合 計     393      141   534

 

 出来レースの総裁選で誕生した菅新総裁は、多くの人には「優しそうな『令和おじさん』」として映ったかもしれない。


 そしてこういう「令和おじさん」ならば政権を握ってもそう無茶なことをやるはずがない、と思ってはいないだろうか。

 

 果たしてそうだろうか。

 

 今回の総裁選で、自民党執行部が全国の自民党員全員が参加する通常の方法でなく、特定の候補者が不利になるような国会議員と都道府県支部連合会代表による選出方法を恣意的に選んだことは、ゆがめられた国政史に長く残るであろう。

 

 たとえ地方予備選を行ったとしても、それは自民党員の意思を忠実に反映したものとは思えない。

 

 現在自民党総裁が国会の決議を経て総理大臣が決まるという制度の下では、たとえ国会議員が国民から選ばれていることだとしても、国民の総意を正確に表しているとは言い難い。

 

 いずれ日本でも「国民が総理大臣を直接選ぶ」大統領制の導入を議論する風潮が生まれることだろう。

 

 さて「令和おじさん」が総理大臣に選ばれることが現実となるいま、これまでの菅官房長官の本当の姿が元官僚などから漏れ伝わってきた。

 

 2014年、元総務省自治税務局長だった平嶋彰英氏は菅義偉官房長官が強力に推し進めていた「ふるさと納税」に異を唱えて左遷させられた元官僚である。

 

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        (2020年9月14日 ABCテレビ「羽鳥モーニングショー」より)

 

 平嶋氏は、この「ふるさと納税」は「返礼品競争が過熱する」「高額納税者向けの節税になっている」として資料を持って制度の問題点を菅官房長官に示し、法律で一定の歯止めをかけるべきだと提案したが、菅氏は「通知だけでいい」と言ったという。

 

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        (2020年9月14日 ABCテレビ「羽鳥モーニングショー」より)

 

 そしてそれから8か月後、平嶋氏は自治大学校長に異例の転出となった。

 

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        (2020年9月14日 ABCテレビ「羽鳥モーニングショー」より)

 異例の転出とは、これは左遷と同じ意味を持つ。

 

 「こうした異例人事は私だけではない」と平嶋氏は言う。

 そして平嶋氏は、「官邸が進めようとする政策の問題点を指摘すれば、「『官邸からにらまれる』『人事で飛ばされる』と多くの役人は恐怖を感じている」そしてそのために「霞が関はすっかり委縮している」とも付け加えている。

 

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       (2020年9月14日 ABCテレビ「羽鳥モーニングショー」より)

 

 加計・森友問題あるいは「桜を見る会」などでも国会における官僚のあやふやな答弁、そして関係公文書などの改ざん、破棄などが日常茶飯事となっていて、それらのことに対する官僚の罪悪感が失われている。

 

 これらの遠因は、今の官邸の官僚に対する統制のあり方、特に人事権で官僚を操ることに問題があるからだ、という気がしてならない。

 

 たとえ政権が変わったとしても、安倍政権と同じように官僚に対する極端な人事権の乱用を踏襲するとしたら、新型コロナ禍とともに私たちの政治に対する思いは、依然重苦しい雰囲気に閉ざされてしまうだろう。