具体性のない曖昧模糊とした菅首相の年頭会見
1月4日、菅首相は官邸で年頭会見を行った。
(2021年1月4日 MBSテレビ「ひるおび」より)
しかし、その会見は新型コロナ感染拡大に見舞われて感染者が急増している国のトップの発言とは思われない、なんとも緊張感の欠ける会見だった。
緊急事態宣言についても「発出については検討に入る」と述べたものの、その時期や内容については言及しなかった。
直前の民放テレビでは、この週末の土曜にも1都3県について緊急事態宣言を発出するのではないか、とテロップが流れたが、菅首相の口からはそのような具体的発言はなかった。
この会見の席で、記者からも緊急事態宣言の具体的なスケジュールや内容について質問が出たが菅首相からそのことに触れることはなかった。
菅首相は日頃の会見でも、常に「検討する」とか「議題に取り上げる」などというものの、その具体的な内容や日程を定かにしない。
いつもの曖昧模糊とした菅首相の演説や会見にはイライラさせられる。
こうして時間が経つうちに新型コロナウイルスはその感染を広げているのであろう。
緊急事態宣言が発出されれば、経済に及ぼす影響は甚大であろう。
もし、そうであっても手をこまねいてこの先、より大きな損失を被るよりもまだ体力のある今のうちに感染拡大防止のためにより強力な対応をとることが必要なのではないか。
ある人は「経済を回すことは大事だが、命が一番」と言っている。
新聞の世論調査によれば、約66%の人が「緊急事態宣言を出すべき」と思っているのだ。
(2021年1月4日 ABCテレビ「羽鳥モーニングショー」より)
4日の「羽鳥慎一モーニングショー」では、この緊急事態宣言発出についてコメンテーターの石原良純氏とレギュラー・コメンテーターの玉川徹氏が「緊急事態宣言発出の是非」について持論を戦わせていた。
(2021年1月4日 ABCテレビ「羽鳥モーニングショー」より)
石原氏は緊急事態宣言発出には消極的だが、玉川氏は緊急事態宣言の発出には一定の効果があるだろうから必要との立場であった。
たしかに経済活動の立場から見ればその発出には消極的にならざるを得ないだろう。
しかし、経済活動は健全な体質の下で行われてこそ上向くもので、場当たり的な対応では一時的な、見せかけのものに終わってしまう。
日本だけでなく、全世界が同じような災厄に見舞われている現状を考えれば、日本だけが順調な経済活動を行えるはずがない。
経済活動がたとえ一時的に鈍化するとしても、今は新型コロナ感染拡大阻止に全力を傾けるのが菅政権に求められているのに、菅首相のなんだか傍観者的な発言ばかりの今日の会見を聞いていると、なんともやりきれない気持ちになってくる。
安倍前首相がよく口にしていた「国難の時」という言葉。それは多くの場合、自身が受難の時にそれを「国難」と言い換えていたのであろうが、今まさに日本は本当の意味での「国難の時」である。
多大の権限を持っている菅首相が中途半端な対応でこの状況を看過しようとすれば、いずれ日本は遠からず「国難」に見舞われるだろう。
時期を失して国難を招いた為政者は過去の歴史に少なからずいる。
それらの国がその後どうなったか、わが国の宰相は一度でも考えたことがあるのだろうか。