この状況下で「GoTo予算」を計上する必要があるのか

 欧州州連合(EU)加盟国政府は26日、入域を許可する国の共通リスト、いわゆる「ホワイトリスト」から日本を除外する方針であることが関係者の話で明らかになった、と「ブルームバーグ」は報じている。

 

 これは最近、日本で新型コレラ感染数が増加していることを考慮しての判断と思われるが、そうなると「ホワイトリスト」に入る国はオーストラリア、ニュージーランド、中国、韓国、シンガポール、タイ、ルワンダの7カ国だけとなる。

 

 EU諸国内では日本における新型コロナの感染リスクは隣国の中国や韓国などよりも高い、と判断しているようである。

 

 今の日本の新型コロナの感染状況と政府の対応をみれば、それは当然のことかもしれない。

 

 その日本では、緊急事態宣言を出しているというのに、またもや国会の与党議員が深夜のクラブなどを遅くまでハシゴしていたというニュースを耳にすれば、いったいこの国の緊急事態宣言というのは何のための宣言なのか、という疑問を諸外国が持つのは当たり前である。

 

 さらに緊急事態宣言下で、新型コロナ禍で日々の生活が危険にさらされている人たちや感染者の急増で悪戦苦闘している医療関係者への救済が最優先なのに、それらを押しのけて「感染拡大のリスクが高まる恐れのある人の移動」を後押しをするような「1兆円のGoTo費用」を補正予算に計上し、その審議が今まさに国会で行われていることに疑問を持つ。

 GoTo予算などの審議は新型コロナが終息してから行うものではないか、と。

 

 京都大学西浦教授の研究チームが25日、「GoToトラベル後に感染が最大6.8倍に増えた」という研究論文を発表した。

 

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      (2021年1月26日 ABCテレビ「羽鳥モーニングショー」より)

 

 ただしこの論文は、(1)4連休中のために{GoTo」だけに限定はできない(2)東京や大阪は含まれていない、と断わっている。

 そのうえで西浦教授は「人の移動が増えれば感染は拡大する」と言っている。

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      (2021年1月26日 ABCテレビ「羽鳥モーニングショー」より

 

 そして少なくとも初期段階では「GoToが感染拡大に影響を与えた可能性がある」と結論付けている。

      

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        (2021年1月26日 ABCテレビ「羽鳥モーニングショー」より

 

 菅首相は「GoToトラベルが感染拡大であるというエピデンスはない」と言っていたが、もしそうであるならばその証拠を国民に示すべきである。

 

 最近、鳥インフルエンザが全国の養鶏場などで発生している。

 

 この鳥インフルエンザウイルスは人には感染しないと言われるが同じ鳥類などへの感染力は非常に強いため、発生した養鶏場などで飼育されている何千・何万羽という鶏などは感染、非感染を問わず、即座に処分されることはご存じだろう。

 

 そして他の養鶏場などへの感染を防ぐために、移動制限区域はその発生場所から原則として半径10kmの範囲内で、人や物の移動が厳しく制限される。要するに鳥インフルエンザにおける「ロックダウン」である。

 

 こういうことを考えれば、感染力が一段と増したという変異コロナも含め、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐためには、主としてそのキャリアーであるところの人の移動を避けることがいかに重要か、わかるだろう。

 

 「GoToトラベル」は人の移動を後押しする事業である。

 言い換えれば、「GoToトラベル」は鳥インフルエンザ発生の際に行う移動制限区域を取っ払うようなものである。

 

 「GOToトラベル」を利用した無症状の感染者が移動すれば、移動先にウイルスが運ばれ、拡がる。

 その逆に、旅行者が移動先で感染することもあり得る。

 

 このことがいかに危険な事か、賢明な政治家の皆さんはわかりそうなものである。

 

 日本の現状を見る限り、今国会の場で「GoTo事業]そのものを論じること自体ナンセンスであることを言いたい。