日本政府の対韓輸出規制は、参院選において不都合なことから国民の目をそらして支持率を固めるため


 古(いにしえ)の時代から、為政者は自分の国に都合の悪いことが起きると、国民の目をそれからそらすために国の外に敵を作り、己への支持を固める政治手法を使ってきた。

 今回、唐突に韓国に対する輸出規制を日本政府が行ったのもそのひとつであろう。
  
 7月4日、日本は韓国に対して半導体材料など3品目で契約ごとに輸出を審査・許可する方式に切り替えた。

 これまでのいきさつから当然、韓国が反発するのは予想されることである。

 今回の輸出規制にあたり、政府と安倍首相は次のように考えたのであろう。

 ①このことで韓国が反発すればするほど、日本国内の結束は高まって安倍政権の支持は固いものとなる。

 ②それは自民党にとって参院選で好ましい結果をもたらすものとなる

 
 現に、JNNがこの6,7日に実施した世論調査では次のような結果が出ている。 

 韓国に対する輸出規制についてどう思うかの問いに
          妥当だと思う     58%
          妥当と思わない    24%
          答えない、わからない 18%
 なんと6割の人が妥当だと言っているのである。

 唐突に出てきた韓国に対する輸出規制は、21日の参院選投開票を前に安倍政権にとって不都合な事柄(年金問題や10月の消費税増税など)を国民の目からそらすためと、外に敵を作ることによって国内の支持を固めることを狙ったものであろう。

 なぜなら、どうしてこの時期に?、と思うからである。

 今回の輸出規制について韓国の一部のメディアは「21日に実施される参院選を意識して(日本政府や安倍首相が)幼稚な手法を使ったとの指摘もある」と、まさに的を得た報告をしている。

 徴用工問題や慰安婦問題、レーダー照射問題などでぎくしゃくしている日韓外交であるが、これらの問題はずっと前から起きていたことであり、この時期になって突然に対韓国の輸出規制が出てくるのは不自然である。

 日本政府は「(徴用工問題などの対する)報復措置ではない」というが、安倍首相は7日のテレビで、対韓国の半導体材料の輸出規制について「(韓国側に)不適切な事案があった」と述べたが、その具体的な理由は明らかにしていない。

 不適切な事案が何であったのか、具体的な理由を明らかにしない以上、この輸出規制は韓国のメディが報じるように「21日の参院選に対する幼稚な手法」と思わざるを得ない。

 また、この輸出規制において日本政府は韓国に対して逃げ道を用意している気配がない。つまり、日韓がともに納得できるような落ちどころを検討していた形跡が無い事である。

 言い換えれば、厳しい輸出規制をしたものの、その出口を日本政府は検討していないということである。
 
 これでは今後の日韓関係は泥沼化してしまうだろう。

 それを喜ぶのは中国であり、ロシアであり、北朝鮮であるかもしれない。

 韓国は今回の輸出規制に対して、半導体材料の輸入先を日本から中国などの他の国に変える方針だという。

 もちろん品質などの点ですぐに実現することは難しいだろうが、中国などの他国に日本の技術者が引き抜かれるのは時間の問題であろう。

 なぜなら日本における半導体材料の技術者は韓国への輸出が滞って会社の業績が下がり、失業の憂き目に遭うかもしれない状況に置かれるからだ。

 さらに驚くことは、国内の関連会社がこのような事態に陥るだろうことに対して、事前にその対策を政府が講じているかどうかわからないことだ。

 同じようなパターンは過去に何度も見られたことだ。

 今回の件は、政府から事前に日本の関連会社に知らされなかったという。
 それだけに関連会社にとってこの輸出規制は青天の霹靂だったというのもうなづける。

 参院選で不都合なことから国民の目をそらし、己の支持率を高めるためだけに利用するという安倍政権の今回の政治手法は決して賛同できるものではない。