私たちは今、「火中の栗を拾う政治家」を望んでいるのだ!

 9月3日お昼時、「菅首相が『新型コロナ対策に専念したい』との理由で自民党総裁選に立候補せず」という文字がテレビ画面を埋め尽くした。

 

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           (2021年9月3日 MBSテレビ「ひるおび」より)

 

 このニュースが流れるや否や、株価相場は不安材料が無くなると判断したのか高値に動く気配が見えたそうだ。

 

 自民党二階俊博幹事長はこのことについて会見し、菅首相は「コロナ対策に専念したい」ということで総裁選不出馬を決めた、と発言したが「コロナ対策に専念」は取って付けた理由のように思われる。

 

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           (2021年9月3日 MBSテレビ「ひるおび」より)

 

 なぜなら菅政権が今まで行ってきたコロナ対策を振り返ってみればすべてが後手後手であったことは明らかであるからだ。

 

 市場もそのことを十分わかっており、菅首相の総裁選不出馬の情報で株価相場が上昇気配を見せていることは、菅首相のコロナ対策がいかにズサンであったかを証明していることにほかならない。

 

 その菅首相が総裁選不出馬の理由としてあげたものが「コロナ対策に専念するため」とは・・。冗談としか思えない。

 

 つい数日前、菅首相自民党役員の人事について刷新の意向を示していたのにそれも飛んでしまった。

 

 コロナ感染拡大に見舞われている現在の様な状況下で、いたずらに党利党略のみの動きしかしない指導者に大きな不信を抱く。それは自民党に対しても同じである。

 

 もし自民党が引き続き政権を担う意欲があるならば、今の自民党の体質を180度変えねばならぬ。

 

 そのためには、今まで国家間の紛争もコロナ禍のような大きな疫病も無かったぬるま湯的な前々政権の政策を踏襲するのではなく、まったく新しい発想で政治を行うことができる人物がふさわしい。

 

 そしてそのためにはどのような人物が自民党の総裁に必要なのか、今度の総裁選では前回行った狡猾な議員票のみの投票ではなく、党員投票というまともな選出方法がとられるのは当然。

 

 ある自民党幹部が総裁選についてこう言ったそうだ。「このような時期に総裁になるのは火中の栗を拾うようなもの」そして「政治家生命をかけて火中の栗を拾おうと本気で思う政治家はいませんよ」だと。

 

 しかし私たちは今、与野党を問わずその火中の栗を拾うことができる指導者を望んでいるのだ。

閉会した東京五輪、すぐに評価すべきでない

 8日、コロナ禍の下で強行開催されていた東京五輪がようやく終わった。

 

 開催期間中に組織委員会のコロナ対策などで若干のトラブルはあったようだが、この大会で日本が史上最多のメダルを獲得したことで最初開催に反対だった人たちも高揚してしまい、開催歓迎の気持ちに変化してしまったようだ。

 

 もし新型コロナが収束し、世界各国がパンデミックを克服していたとしたならば、アスリートの人たちがこの日まで一生懸命腕と技を磨き、純粋な気持ちで各競技に参加して己の力量を最大限発揮することができたこの開催には文句のつけようもない。

 

 しかし、パンデミックの下で強行開催された東京五輪が無事に閉幕したからといって無条件に賛辞を贈るわけにはいかない。

 

 開催前、多い時は国民の約7割が東京五輪の今夏開催に反対していた。
 しかし、東京五輪は強行開催された。

 

 結果として、東京五輪は開催期間中に大きなトラブルも無く閉会式に至ったが、東京都などをはじめとした全国の都市では毎日の新型コロナの新規感染者数が過去最大を記録するなど感染爆発が起きた。

 

 東京五輪開催と新型コロナ感染急拡大について菅首相は「これまでのところ五輪が感染拡大につながっているとの考え方はしていない」と言った。
 さらに繁華街の人流についても「五輪開幕前より増えていない」とも語った。

 

 このような首長のいる国で開催された五輪において、自国の選手が多くのメダルを獲得したことから菅首相をはじめとした開催推進派だった人たちだけでなく、当初は開催に反対だった人たちもメダルラッシュに勢いづき「東京五輪は大成功だった」「やっぱり開催して良かった」「五輪開催と新型コロナ感染拡大は関係なかった」などと口にし始めた。

 

 政府は国民に対して不要不急の旅行や外出に自粛をさかんに呼び掛けているがあまり効果はみられないようである。

 政府と国民がコロナ感染拡大に対して同質の危機感を共有しているとはとても思われない。

  なぜか。

 それは、東京五輪の開催によって国民の危機感は薄れ、何かわからぬ高揚感だけを高めることになったからである。それが国民の気の緩みとなり、感染拡大の一因となったのである。

 コロナのことなど頭の隅に追いやられてしまった。

 

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         (2021年7月30日 MBSテレビ「Nスタ」より)

 

 コロナ禍の地において、人流や人々の気の緩みを招く恐れのある世界的なイベントを行えば、それが感染拡大の大きな原因になり得るということは明白の理である。

 

 昨年、新型コロナの感染拡大が鎮まっていないときに政府はわざわざ「GoToトラベル」を実施し、コロナ収束の芽を摘んでしまった。
 この時も菅首相は「トラベル事業が感染拡大の原因ではない」と言い張った。

 

 8日に行われた男子マラソンでは、応援のために多くの観客が沿道に詰めかけているのを見た。
 沿道での応援自粛要請も何のそのである。

 

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        3密もなんのその、沿道には多くの観客が・・
     (2021年8月8日 ABCテレビ「東京オリンピック・男子マラソン」より)

 

 このような光景はこの期間中、どの競技においても多かれ少なかれ見られた。
 一体、政府の言う3密回避の要請は何だったのか。

 

 新型コロナウイルスは目に見えない。
 そして感染してもすぐさま分かるものでもない。
 
 新型コロナの潜伏期間は1~14日といわれ、感染した人に症状が現れるとは限らず無症状の場合もあり、この時はこの感染者が知らずに他の人に感染させる恐れがある。

 

 8月24日に開催が予定されている東京パラリンピックには選手に多くの介護者を必要とすることから、今の状況下で開催することは無謀だと言わざるを得ない。

 

 強行開催された東京五輪が終わっても新型コロナの感染拡大は止まるところを知らない。
 最近はデルタ型という感染力の強いウイルスが出現し、感染者1人が従来型の4倍の8~9人に感染させるという。

 

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     (いずれも 2021年8月2日 ABCテレビ「羽鳥モーニングショー」より)

 

 五輪開催中、選手や大会関係者の感染者数は計430人(7月1日~8月7日)だったというが、なぜか変異型(インド型やラムダ型あるいはデルタ型など)だったのかどうかは明らかにされていない。

 

 コロナ禍のもとで強行開催された東京五輪によってこの先、日本国民が健康や医療そして金銭的な分野でどのような代償を払わされるのか。

 それは早くて今年末、ややもすれば来年夏まで待たねばわかるまい。

 

 この東京五輪強行開催の評価は、これらの期間を経てからなされるべきであろうと思うのである。

東京五輪会場は形を変えた治外法権の場なのか!

 この頃のテレビはどのチャンネルを回しても東京五輪の競技の映像ばかりが目に飛び込んでくる。


 五輪関係以外の重要なニュースを見たくて、いつものニュース時間帯にチャンネルを合わせても五輪競技の映像しか飛び込んで来ない。

 新聞のテレビラジオ欄には早朝から深夜の時間帯まで五輪関係の文字が躍っている。

 

 今から約半世紀前の1964年に開催されたアジア初のオリンピック・東京大会もテレビ中継されたようだが、開会式を含め各競技の中継を私はほとんど観ていない。
 なぜならこのオリンピック開催に合わせてちょうど学校が休講となり、この休みを利用して百数十キロ離れた友人の学生寮まで自転車旅行をしていたからである。

 

 この1964年の東京大会でも、開会式であのブルーインパルスが10月10日の真っ青な空に五輪を描いた映像を後日録画で見たが、その見事な五輪の輪は今でも鮮明に覚えている。

 

 もし新型コロナのことが無かったら、今回の東京五輪に私は57年前の時と同じような感動を直接味わいたくて連日テレビにむしゃぶりついていたことだろう。

 しかし、今回はそういう心境にならなかった。


 なぜか。

 

 東京五輪の開会式が済んで各競技が始まったとたんに新型コロナの感染者数が爆発的に増えてきた。

 

 東京五輪と感染者の増大との間に因果関係がないなどと政府や大会関係者は否定をしているが、感染爆発の様々な要因が五輪開催にあることは間違いないだろう。

 そしてそれは五輪開催によってもたらされた国民の気の緩みである。

 

 ロックダウンという強い規制が出来なければ、国民に気の緩みをもたらす恐れのある五輪開催は中止すべきだったのではないか。

 

 感染予防のため三密回避などと言われているが、この東京五輪が始まっていろいろな競技の場面で、とてもソーシャル・ディスタンスを保っているとは思われない観客や関係者が大きな声を互いに発している場面、競技を終えたアスリートたちがコーチなどとハグしあっている場面などを目にすると、政府の言う三密回避とは一体何だろう、と思ってしまう。

 

 政府や行政は我々国民にいろいろな自粛を要請しておきながら、東京五輪という名を冠する場ではこのありさまだ。

 

 大会組織委員会は新型コロナ対策に「バブル方式」を取り入れているというがこの「バブル」、実はプレーブックに記された自粛要請などの規則などから逃れるための「バブル」のようである。

 

 「五輪」と言えば何でも許されてしまう。
 
 東京五輪会場は形を変えた一種の治外法権の場のように思えてならないのだ。

ジェンダー平等、サルの方が進んでいた!

 大分市高崎山自然動物園で、今まで群れを率いてきた雄ザルに代わって雌ザル「ヤケイ」(9歳)が群れのトップに立った、という記事が今朝(7月31日)の新聞に載っていた。

 

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         サル寄せ場で餌を取り合うサルの群れ

        (2014年3月 高崎山自然動物園で撮影)

 

 その記事によれば、この高崎山自然動物園のサルは餌付けで知られており、これまで約70年間群れを率いてきたのはすべて雄ザルで、雌ザルがトップに立つのは初めてらしい。

 

 最近までトップの座にいたのは雄ザルの「ナンチュウ」(推定31歳)だった。

 

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     今までのB群のトップだった「ナンチュウ」(と思われる)雄ザル

          (2014年3月 高崎山自然動物園で撮影)

 

 その「ナンチュウ」は最近元気がなく、秋口の発情期で雌ザルを追いかけてもふられてしまうことがたびたびあるらしい。サルの31歳というのは人間に当てはめれば

100歳に近いということらしいから無理からぬことである。

 

 この高齢の「ナンチュウ」の動きにわが身を重ねて、「がんばれ」と声援を送る観光客もいるらしい。

  その「ナンチュウ」が群れのトップの座を奪われたのである。

 

 園が試しに群れの序列を確認する「ピーナツテスト」を30日に実施したら、雌ザルの「ヤケイ」が真っ先にエサに手を伸ばした、という。
 その時「ナンチュウ」は「ヤケイ」から逃げるような行動をとったため、園では「ヤケイ」を新しいリーダーと認めた、という。

 

 サルの世界でも男女平等化は進んでいる。

 

 日本の政界をはじめとしたさまざまな分野の女性進出は各国と比べてもかなり遅れていることを最近痛感するが、東京五輪・パラ組織委員会の森前会長の女性蔑視発言は記憶に新しい。

 

 この女性蔑視発言がきっかけとなったのか、東京五輪・パラ大会組織委員会の新会長には女性が選ばれた。

 世の批判を免れるために、取って付けたような交代劇に高崎山の雌ザル「ヤケイ」も唖然としたに違いない。

 

 政界でも産業界でも女性がトップに座するということがいまだにビッグニュースとなるような日本。

 

 一方、実力で群れのトップに立った雌ザル「ヤケイ」、そしてそれを素直に受け入れたサルの群れ。

 

 ジェンダー平等において、日本の政界・産業界は諸外国どころか、高崎山のサルにも一歩後れを取ったようだ。

東京五輪、開会式直前になっても受け入れることができない

 今でも日本国民の半数以上が中止あるいは延期を望んでいた東京五輪は、政府・東京都そして大会組織委員会などから中止や延期の声があがることも無く、いよいよ今日開幕する。

 

 今日に至るまでこの東京五輪については色々な出来事があった。

 

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         (2021年7月21日 BS-TBS「報道1930」より)

 
 とどめは、開閉会式のクリエーティブチーム「ショーディレクター」の小林健太郎氏が、過去にユダヤ人大虐殺をあざけることをしたという理由で開会式直前の昨日解任された。

 

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         (2021年7月22日 MBSテレビ「ゴゴスマ」より)

 

 今年になってからは3月に演出総合統括の佐々木 宏氏、そして今月19日には小山田 圭吾氏が辞任している。

 

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         (2021年7月22日 MBSテレビ「ゴゴスマ」より)


 この東京五輪、なぜこれほどまでに問題やトラブルが多いのか。

 

 新型コロナのパンデミックは誰もが予想もつかなかったことではあるが、そのために今この東京五輪開催の周辺で起きている様々な出来事がまるで呪われた催事のようにも思われてしまうのである。

 

 そんな中で私が今でも奇異に思うのは、2019年に新しい国立競技場ができた時に観客席が白、黄緑、グレー、深緑、濃茶のまだら模様になったことである。

 

 このまだら模様の目的は以前このブログでも記したが「空席を目立たないようにする」ためである(https://gnokarakuchi.hatenablog.com/entry/2019/12/23/131942)。

 

 まさかとは思うが、このまだら模様の観客席は新型コロナ感染予防のために無観客とすることをあらかじめ予想してまだら模様にした、そのように思えてならないのだ。

 

 この先、東京五輪パラリンピックは途中で取り止めることなく、無事閉会式を迎えることができるのか。

 

 今となっては、閉会後の日本における新型コロナ感染予防や経済の立て直しに強行開催した東京五輪の影響が幸となるか、はたまたその逆となるか、私たちは検証していかなければなるまい。

 

 そしてその結果を、新型コロナのようなパンデミックが起きた際の世界的催事(たとえばオリンピックなど)の開催がどうあるべきかに役立てなければ東京五輪の開催の意味はない。

 

 今まで以上に新型コロナ感染の拡大が予想されるなかで強行開催される東京五輪をどのように受け入れて良いのか、開会式直前になっても私はわからないのである。

都議選結果は小池都知事の「マジック」か「作戦」か?

 4日の東京都議選で、自民党公明党と合わせて議席過半数を目論んだがあえなく失敗した。

 

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                  自公は過半数に届かず

        (2021年7月5日 ABCテレビ「羽鳥モーニングショー」より)

 

 選挙戦中盤までは自民党幹部の誰もが「自公で過半数をとることは間違いない」と言っていたが、結果は大方の予想を覆すものだった。

 

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         選挙前、自民党幹部はこう言っていたのに・・

      (2021年7月5日 ABCテレビ「羽鳥モーニングショー」より)

 

 なぜ予想が覆ったのか。

 

 小池百合子東京都知事疲労のために10日間公務を離れて静養したこと、そして退院したかと思ったら選挙最終日に都民ファ立候補者の応援に出かけたこと、これらのことが今回の結果を招いたというメディアもある。

 

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      (2021年7月5日 ABCテレビ「羽鳥モーニングショー」より)

 

 5日のABCテレビ「羽鳥モーニングショー」ではこれを「小池マジック」として報じていた。

 

 そうすると小池知事が疲労で入院したことは同情を集めるため、投票日目前になって退院し、都民ファ立候補者の応援に出かけたこともじっくり練られた作戦かと思われそうだがそれはたまたまだろう、と私は思う。

 

 結果的にそのようなストーリーであってもおかしくないと思われるのも政治家としての小池知事の稀有な資質に起因するのかもしれない。

 それが今回の都議選の結果が小池知事の「マジック」とか「作戦」とかいわれる所以である。

 

 一部のメディアも報道しているが、今回の都議選における自民党の敗因は別に2つあると挙げている。

 

 ひとつは、疲労で入院した小池知事について麻生太郎財務相が「自分でまいたタネでしょう」と皮肉ったことである。これで小池知事に同情が集まった。

 

 そしてもうひとつは、安倍晋三前首相が月刊誌の対談で東京五輪の開催に反対している人たちを「反日的」と発言したことである。これで五輪開催に反対の人が自民党候補者を避けた。

 

 もちろん、菅政権のコロナや東京五輪の対応に問題があったというのも挙げられるが、これらは選挙前からわかっていたことである。

 

 今回の都議選の結果は、小池知事のマジックでも戦略でもなく、総理大臣を経験した人がこのような軽薄で短絡的な発言をしたことが都民に忌み嫌われたからだと思わざるを得ない。

どうしても今夏の東京五輪開催の意義を見つけ出せない

 ここ数日、東京五輪に参加するため外国の選手団が来日してきているその模様をテレビは淡々と流している。

 

 その選手団の人たちの顔を眺めると、笑顔ではあるが何か緊張しているような表情も垣間見える。

  幾人かの選手は無理して笑顔を作っているようにも思えてならない。

 

 それを見ていると、私たちは笑顔で迎え入れなければならないのに、同じように緊張してしまう。

 なぜだろう?

 

 57年前の10月に東京オリンピックが開催されたとき、日本の土を踏んだ外国選手は底抜けに明るい表情だったように思う。

 

 当時、白黒テレビはともかく、カラーテレビはまだ各家庭に充分行き渡っていない頃で、下宿していた私の部屋にはテレビは無く、翌日下宿していた主人から朝刊を見せてもらい、そこで来日した選手の顔を初めて見たのだった。

 そして選手たちのあふれるような喜びが紙面の写真から伝わってきたことを覚えている。

 

 それから約半世紀、今度は液晶カラーテレビで成田空港に降り立った外国選手団を見たが、昔私が感じた同じものは伝わってこなかった。

 

 世界が新型コロナのパンデミックに襲われ、いまだ収束する気配が見られないという中で開催されようとする五輪の選手としてコロナ禍の日本に来たというのが大きな理由であろう。

 

 そして迎えなければならない私の方にも原因があり、それは今度の東京五輪に関して悶々とした以下のような疑問があるからなのかもしれない。

 

なりふり構わぬ大会組織委員会朝令暮改


 ついこの間、東京五輪・パラ大会組織委員会が競技会場での酒類の提供を認める検討をしていると発表したかと思ったら、一転して酒類の提供はしないことを示した。

 

 このコロナ禍で国民には公の場での酒類提供の自粛が強いられているのに、たとえ五輪と言えどその枠から外れて良いということがあってはなるまい。

 それを組織委員会は、五輪は特別だとか何とか言って酒類を競技場で提供する方針を打ち出していた。


 案の定、酒類の提供は多くの批判を浴び、組織委員会酒類の提供を一転断念した。

 最初から分かりきっていることを「うまくいけば・・」とアドバルーンを上げて国民の反応をみる手法は止めないか。

 

観客有りか、無観客か


 このコロナ禍で五輪開催となったらできるだけ人の流れを抑えることが重要だろう。

 大会組織委員会は最初、五者協議で五輪開会式の入場者数を一般観客数とは別に特別枠を設けて計2万人にする案を提出した。

 

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      その後、別枠の具体的な数字は検討中ということになった
       (2021年6月22日 ABCテレビ「羽鳥モーニングショー」より)

 

 それによると五輪開会式の観客1万人のほかに別枠の入場者数を1万人とし、計2万人として認めようとしているのだ。

 この別枠に含まれる入場者とは大会関係者とはスポンサー関係やIOCなどの関係者であるという。
 もっと平たく言えばIOC関係者とはIOC貴族と言われる者やその家族なども含むと思われる。

 

 さらに驚くのは、組織委員会が設定している特別枠は開会式だけでないということである。
 五輪の他の競技施設でも一般客以外に特別枠としての入場者数を設定しようとしている。

 

 しかし組織委員会はこのごろ、この別枠の入場者数についてはあまり触れなくなった。
 批判を恐れて特別枠の数字を言いづらくなったのか。

 

 このコロナ禍でもし開催するとしたら「無観客」が望ましいという提言があるなか、政府・都・大会組織委員会はその言葉を口にすることを避けているようにみえる。

 

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          組織委は無観客にするつもりはないらしい

       (2021年6月22日 ABCテレビ「羽鳥モーニングショー」より)

 

 橋本組織委会長は24日、5者協議の共同ステートメント
 1.すべての会場で観客の上限を50%以内で1万人とする
 2.7月12日以降に緊急事態宣言とまん延防止措置が発動されたら無観客も含め対応

  する
 とは言っているが無観客を確約したものではない。

 

 組織委の今までの言動について、一部にはこういう声もある。

 

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       (2021年6月22日 ABCテレビ「羽鳥モーニングショー」より)

 

 五輪開催中に新型コロナ第5波の可能性もある中、競技施設での無観客という選択肢はますます現実味を帯びてきたというのに・・・。

 

本当に機能しているのか「バブル方式」


 バブルと言っても景気の話ではない。
 東京五輪で入国した選手団らが日本国民と接触することを避けるために入国した人を隔離する水際対策の一環を指している。

 

 19日に来日したウガンダの選手団のうちの2人がインド型デルタ株に感染していることがわかったが、1人は成田空港で感染が判明し、その感染者を除いた残り8人は濃厚接触者という判定もされずに入国してそのままバスで大阪の泉佐野市へ向かい、入国5日後にその中の1人が感染していることがわかった。そしてこの選手団と行動を共にした泉佐野市の職員は濃厚接触者として自宅待機となった。

 

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 今までに来日した選手団の感染者は今までに6人、うち2人はインド株デルタ型

       (2021年6月25日 ABCテレビ「羽鳥モーニングショー」より)

 

 このことで空港で残り8人の選手に対して濃厚接触者の判断をしていなかったこと、そしてその判断をどこが行うかを明確にしていなかったことがわかった。

 

 菅首相らは盛んに「動線分離を徹底させる」と言っていたが、穴空きだらけのバブル方式、これは一体何なんだと思ってしまう。

 

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         菅首相はこのように言っているが実態は・・・

       (2021年6月25日 ABCテレビ「羽鳥モーニングショー」より)

 

 ウガンダ選手団の件があったからか、成田空港検疫所は27日、五輪関係者と一般客の動線を分ける方針を固めたという。また濃厚接触者の特定・隔離などは到着空港で行うことになったらしい。

 しかし今頃になってこんな基本的なことを決めるなんて驚いてしまう。

 

 政府や組織委員会は新型ウイルス感染予防のために厳しい入国審査をするとは口にはするが、こんなズサンな入国審査で国内にウイルスを持ち込まれてはたまらない。

 

 新型コロナの感染拡大を阻止するためにはまず「人流」を絶つというのが大原則であるのに、この頃の政府や組織委員会のやることなすことはこの「人流阻止」に逆らっているように思えてならない。

 

 さらに看過できないことがある。

 

 それは東京五輪「プレーブック」の事である。

 東京五輪「プレーブック」の第三版に記載されている内容で、五輪関係者・メディアなどに携わる5万人超の人たちについて、食事は会場内や宿泊先の食堂やレストランあるいはホテルなどの自室内で摂ることとしているが、それが不可能な場合はコンビニやテイクアウトの店で食べ物を買うことができ、あるいはレストランの個室を利用することもできると明記していることである。

 

 言い訳がましく「組織委員会が示した施設」といかにもバブル方式で厳選した店のように表現しているが、なんてことはない実際は街中にある普通の店を指している。

 

 表向きには、飲食は会場内や宿泊先と限定しておきながら、一方ではそれが不可能ならば街中のコンビニやテイクアウト店で買い物してもいいですよ、と言っているのだ。

 

 さらに組織委員会の水際対策の文書には、海外メディア関係者が到着後隔離0日を希望する場合の理由の例文が載っていて、それを書けば隔離が免除されるようになっている。
 このような文面にすれば隔離はしませんよ、とわざわざ裏の手を教えているのである。

 

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    入国直後から活動するので隔離0日を希望する場合の組織委の例文

 

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           組織委の英語の例文と通信社の書面

        (いずれも 2021年6月12日 MBSテレビ「報道特集」より)

 

 実際ある通信社が、一言一句まったく同じ文面を提出して隔離が免除されている。
 この件について、組織委は「精査中」と答え、当該の通信社は「機密事項なので答えられない」と返答している。

 

 いくら厳しい水際対策を示しても、一方ではこのようにザル法に近い運用をしていれば水際対策など無いのと同じである。

 

 

 もしパンデミックという状況でないオリンピック・パラリンピックの開催であるならば歓迎できない理由などどこにもありはしない。

 

 しかし、世界中が新型コロナのパンデミックに見舞われ、開催地である東京も第5波に襲われようとしている今、東京五輪・パラの開催意義を見つけ出すことができないのは当然なことではないだろうか。