今の状況で東京五輪の開催強行は日本の破滅を招く
21日付けの英紙タイムズ(電子版)が今夏の東京五輪について「日本政府は中止せざるを得ないと内々に結論付けた」そして「2032年開催プランを検討」とも報道した。
「日本政府が東京五輪中止を検討」と報じる英国タイムズ紙
(2021年1月22日 MBSテレビ「ひるおび」より)
このことに対して日本政府は否定しているが、この記事にはその情報の出所が「(日本の)連立与党の古参議員の1人」と記されているという。
与党内でも今夏の東京五輪の開催について強く疑義を唱える者がいるということをうかがわせるニュースではある。
IOCのトーマス・バッハ会長も22日、英国タイムズの報道をフェイクニュースと否定しているが、主催者側の立場としては認めることは口が裂けても言えまいが、開催国である日本や世界の現在の状況を冷静に判断すれば結論はわかることである。
日本政府とIOCバッハ会長は現実から目をそらしているように思える。
まさか無観客を想定して、会場の客席をまだら模様にしたのではあるまいな?
(2021年1月22日 MBSテレビ「ひるおび」より)
主催国である日本の新型コロナ禍の実情は目を覆うばかりだ。
新型コロナウイルスの感染拡大に対して、今までこれといった効果的な対策も打ち出せずにいる日本政府が、感染収束あるいは終息についてなんらの基準も示さずに五輪開催に突き進めば、日本は再び第4次あるいは第5次の感染拡大に陥るだろう。
一つ気をつけねばならぬことがある。
このままの状態でいけばおそらく日本における4月以降の新型コロナの感染拡大はいったん収まりかけるだろう。
このことをもって五輪開催を推し進める日本政府やIOCは収束だと宣伝してくるかもしれない。
いかにも収束にむかっているのかと思わせるような感染数の減少がみられるかもしれないが、それは大きな間違いだ。
気温が上昇すると一般にウイルスの活動は弱まる。インフルエンザと同じである。
この新型コロナウイルスだって同じで、一時活動が鈍くなるからである。
そのことは昨年1年間の新型コロナ感染者数の月別推移をみればわかる。
この点では他の風邪のウイルスと同じである。
ただ違うのは、新型コロナウイルスは変異したものもあわせて未だにその性質が十分明らかになっていないこと、そして短期間に開発したワクチンに100%の信頼を置くには不安があること、さらにそのワクチンの供給体制がいまだに不完全であることである。
初夏の一時的な感染縮小をもって収束したと判断してむりやり東京五輪開催に突っ走れば、再びウイルスの活動が盛んになる秋口から日本は悲惨な状況を呈するだろう。
もし幸運にも日本だけが五輪開催までに新型コロナの収束あるいは終息を果たせたとしても、世界各国から選手や観客が日本に押し寄せるという構図は、新型コロナの収束を果たせていない国などから新型コロナウイルスあるいはその変異したウイルスが日本に持ち込まれる恐れは十分あるということである。
世界中の選手が一堂に会する東京五輪会場で偽陰性、無症状の選手が他の選手にウイルスをまき散らす。その危険性がないとは言えまい。
そのようなことを考慮して選手団を東京五輪に派遣しない国も出てこよう。
ワクチン接種という対応も、各国の選手や外国からの観客に充分見合うだけの量が確保できるか、という問題もある。
もし不幸にもそれらの人たちが日本国内で発症したらどのような措置を取るのか、特定の場所に2週間隔離をするのか。
3月25日になると聖火リレーが始まる。
このことによって東京五輪の機運を無理に高めようとすればするほど、東京五輪が開催直前になって中止となった場合、その代償は計り知れないものになるだろう。
現在の日本や各国の新型コロナあるいは変異コロナの感染状況をみれば、正常な状態で行われる東京五輪開催の可能性はゼロに近いだろう
。
開催を強行するために、無観客や感染を防ぐために臨時に変則的なルールを用いたとしたら、もはやこれはオリンピック精神から遠くかけ離れたものと言わざるを得ない。
そこまでしてこの夏に東京五輪を開催する必要はない、と思う。
もし東京五輪が中止となった場合、この東京五輪のために今まで人生の大部分を費やしてきたアスリートたちがどれほど落胆するか、それは痛いほどわかる。
コロナ禍にある今、優先すべきものは
賞よりも命。これがすべてだ。
大きな賞は失ったが、それ以上の命を救えた。
それは日本国民、いや世界人類がこの新型コロナ禍を乗り越えようとした最も大きな代償として我々の心に刻み付けられよう。
決断が遅くなればなるほど、それが果たせなくなった時の経済的負担や精神的負担はより増してくる。
IOCや日本政府は、今はソロバンを弾くことよりも新型コロナウイルス感染からアスリートと人命を守ることに専念すべきである。