「緊急事態宣言」、単に延長するだけでは意味がない
ある町角のあちこちに何年も前に当地の自治会連合会が掲げた幟(のぼり)が風雨に晒されてもうボロボロになっている。
新しい幟に取り換えるとか、ボロボロになった幟を処分するとか、そういう気配は全くない。
その幟にはこう書かれている。
「明るい挨拶で活気ある町を!」。
そのスローガンを幟にして町角に立てた自治会の偉い人と時折田舎道ですれ違うが、いつもムスッとした表情をしており、こちらから挨拶をするとちょこんと頭を下げるだけである。
先方から先に挨拶を受けたことはまったくない。
もう何年もボロボロになったその幟を見慣れている町の人も、幟に書かれたことが偽善だということを知っている。
立山室堂
首都圏での緊急事態宣言の再延長が決まったが、菅首相がこのことを発表しているとき、上記の幟のことを思い出した。
菅首相は「延長は自らの判断だ」と自分の決断を強く訴えただけで、なぜ延長が2週間なのか、そしてこの1か月間は緊急事態宣言下にあったにもかかわらず、首都圏での感染者数の減少が鈍くなったのはなぜか、そして医療現場では依然として逼迫の状態が続いていることに対して強力な対策に言及することはなかった。
今までと同じ「緊急事態宣言」の幟をもう2週間立ててさえおけば効果があるような言い方で延長を口にする菅首相と、上述した自治会の偉い人が重なって見える。
2週間という延長期間は、25日から始まる聖火リレーを意識したのであろう。
そういう雑念のもとで決めた2週間という延長期間で、この新型コロナが収束するとは到底思われない。
今までの緊急事態宣言に加えて、なぜ感染者減少の鈍化が始まったのか、医療関係者に対するより手厚い保護、そして最近感染者数が増加している変異型に対する明確な対策と迅速なワクチン接種のスケジュールに関する具体的な方針を打ち出すべきではないのか。
立山室堂
余談であるが少し気にかかることがある。
菅首相は5日の参院予算委員会で「リバウンド防止に全力全霊を挙げて取り組みたい」と言った。
テレビの字幕スーパを見て「全力全霊」という言葉があったかな~、と。
「全身全霊」ならばよく耳にするし、広辞苑にも載っているが「全力全霊」はどこにも載っていない。
あるメディアはこの点を考慮したか、この言葉を「全力・全霊」と区切って伝えていたが、これでも「全力を注ぎ」「全霊を傾ける」といった言葉が必要なのではないか。
まぁ、この際細かいことは言わないことにしよう。
本題は「緊急事態宣言」という重々しいものであるのだから・・。