最近の新聞報道に思う


 3月5日付の読売新聞朝刊を読んでいて紙面の片隅に小さく載った記事に「ん?」と目が止まった。

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               (2018年3月5日付 読売新聞朝刊)

 

 それは安倍首相が5日、元読売グループ本社取締役論説主幹の小田尚氏を国家公安委員に任命する、という記事である。

 安倍首相の「お友達人事」がまたもや行われたようである。

 小田氏は読売新聞の大幹部でありながら、安倍首相とは「メシ友」の関係で今まで幾度となく会食を共にしている。

 小田氏は昨年5月、日本記者クラブの理事長にも就任したばかりだが'19年の任期終了を待たずに先月末に突然理事長を退任した。

 私が危惧するのは、このような経歴を持つ人物が国家公安委員に任命されることで、かって属した新聞社の報道などが権力によってゆがめられないか、ということである。
 
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               (2018年3月2日付読売新聞朝刊) 
 
 そんな疑いを裏付けるようなことが数日前に見受けられた。

 そのひとつは、フィギュアスケート男子の羽生結弦選手が国民栄誉賞を受けるという報道である。

 3月2日付読売新聞朝刊の一面トップに「羽生選手 国民栄誉賞」という文字が躍った。

 他社の新聞などの朝刊にはそのような記事は一字たりとも載っていない。他社が記事にしたのは同日の夕刊である。

 これは官邸が読売新聞にリークしたのであろう、という説が有力である。

 これが事実だとすれば、なぜこのようなことを官邸がしたのか。

 それは2日の朝日新聞朝刊の一面トップに載った、森友問題で財務省の公文書が改ざんされた疑いがある、という記事で推測がつく。

 官邸は読売新聞に国民栄誉賞の記事を載せて、朝日新聞の「財務省公文書改ざん」報道に対する安倍政権の疑惑から、国民の目をそらす意図があったのだろう。

 読売新聞の権力に寄り添うような記事の載せ方は次の事からでもうかがい知れる。

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(2018年3月5日付 読売新聞朝刊33面の社会面 写真は加工しています)
 
 野村不動産裁量労働の社員が命を絶ち、長時間労働が原因として労災認定されたというニュースは朝日新聞毎日新聞とも今朝(5日)の1面に大きく載せている。

 たとえ安倍首相にとって都合の悪いことであっても、他社でこれだけ大きく取り扱われるニュースを報道せぬわけにはいかない。

 そこで読売新聞は1面ではなく、33面の社会面の左下に小さく載せたのである。

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 国会でも取り上げられていることでもわかる通り、裁量労働制に関することは国民が大きな関心を寄せている事柄である。

 わざわざ社会面の隅に小さく載せるようなものではあるまい、というのが私の感想である。

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 このように同じ事案であっても、時の政権の顔色を伺うような記事の取り扱いに、本来の新聞の役割が果たせるのかと、はなはだ疑問に思う。 

 民主主義国家における新聞の役割とは、政治の監視、社会の監視、そして真実を曲げることなく国民に知らせることであろう。
 
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 ある調査によると、各メディアの信頼度は新聞が一番高くて約70%、次いでテレビ(66%)、インターネット(34%)、雑誌(21%)と続く。

 たとえどんなに高度なネット社会になっても、昔ながらの媒体である新聞の信頼度は高いのである。

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 マスコミに携わる人間は、人々の信頼を裏切ることのないよう、またそのような誤解を受けることのないように心掛けなければならないのに、権力に寄り添うような今回の出来事は残念と言うより失望に近いものを抱いてしまう。