安倍首相のアメリカ訪問は現代版朝貢外交


これぞ現代版朝貢外交

 これほど頻繁にワシントンまで行って、米国大統領と会談した日本の首相はいないのではないか。

 前回、4月の日米首脳会談からわずかひと月半だ。

 ちなみに政府専用機を一回飛ばすとおよそ2億2千万円の費用がかかる(第2次安倍政権が始まった2012年12月26日n~2016年11月24日の平均)。

 まるで「トランプ詣で」だ。

 また歴代の首相の外国訪問回数を調べてみると

歴代の首相の外国訪問回数(2006年10月から2018年5月まで)

 安倍首相 76か国、延べ142回(2013年1月~2018年5月)
 野田首相 10か国、延べ 16回(2011年9月~2012年11月)
 菅 首相  7か国、延べ  8回(2010年6月~2011年5月)
 鳩山首相  8か国、延べ 11回(2009年9月~2010年5月)
 麻生首相 12か国、延べ 15回(2008年9月~2009年7月)
 福田首相  9か国、延べ 10回(2007年11月~2008年8月)
 安倍首相 18か国、延べ 20回(2006年10月~2007年9月)
                                   (以上 外務省総理大臣の外国訪問一覧より)

G7サミットでトランプ大統領に話しかけるのは都合が悪い!?

 8日にはカナダ東部のシャルルボワでG7サミットがあるからついでに、と思ったのかどうか。

 おそらく今回のG7サミットは貿易問題が最大のテーマとなると思われ、保護主義を主張するトランプ大統領と他の6か国の対立となるだろう。

 そうなると米朝首脳会談に際して、安倍首相が拉致問題などでトランプ大統領に頭を下げて要望する姿を他の国に見られたくない、ということもあるのだろう。


今回の日米首脳会談で目新しいことは?


 8日早朝(日本時間)、日米首脳会談を終えて安倍首相とトランプ大統領が記者会見をしたが、正直言って目新しいことは何一つなかった。

 トランプ大統領米朝首脳会談拉致問題を持ち出すことを確約したと言うが、北朝鮮に拘束されていた3人のアメリカ人がすでに釈放された今、米朝首脳会談の席上でトランプ大統領がどれほど熱心に拉致問題を取り上げることができるのか、いささか疑問である。

 トランプ大統領米朝首脳会談で第一に狙っているのは、「非核化」という言質を金正恩委員長から引き出すことであろう。たとえそれが段階的であろうとなかろうと。


 もしトランプ大統領が「日本の拉致被害者を早期に帰国させよ」と北朝鮮に迫っても、北朝鮮が「それは解決済み」と答えればそれ以上の進展は考えられないだろう。

 拉致問題、それは日本国の問題であり、本来は日本政府が直接北朝鮮に要求することである。

 他国(日本)からの要望をメッセンジャーボーイのごとく相手国に伝えるだけの仕事を受け持って、「はい、安倍首相の要望は確かに伝えましたよ」ということを確約したのだろうか。


 トランプ大統領は、ノーベル平和賞にノミネートされるかどうか、そしてこの米朝首脳会談が実現させたという成果も併せて、今年11月の中間選挙までにいかに米国内における自分への評価をアップすることができるか、それらの事で頭が一杯のはずだ。

日本人の拉致被害者救済は日本政府が直接行わなければならない

 何度でも言うのだが、日本人の拉致被害者の帰国は、当事国の日本の政府が率先して解決せねば絶対に進展しない。

 北朝鮮は「拉致問題は解決した」と言っているが、日本が他人(アメリカ)にこの問題を託していることが気に入らないのかもしれない。

 その証拠に拘束されていたアメリカ人はすんなり帰国したではないか。

 アメリカの圧力から逃れるための最大のカードを北朝鮮は手放したのだ。

 北朝鮮に対する日本の切り札は何か、政府が真剣に考えればそれはわかるはずである。

安倍首相は拉致問題を保身の道具として使っている

 安倍首相は、内閣支持率が下降した時や何らかの窮地に陥ったとき、よく使う手が「拉致問題」という言葉を口にすることだ。

 安倍政権になって拉致問題の解決がどれほど進展したか、考えるがよい。

 もうひと月以上も前の4月22日、東京で「北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会」による国民大集会が開かれた。

 この集会には安倍首相も出席したが挨拶を終えると足早に会場を去った。

 そのとき、参加者の間から「もう帰るのか!」「もっといろよ!」という罵声が飛んだという。

 2012年の時も同じような光景が見られたという。

 機会あるごとに「拉致問題」を口にする安倍首相だが拉致問題を真剣に取り組む姿勢はみられず、ただ自分の存在をアピールするための道具として使っているように見える。

数千億円製品購入は拉致問題提議→提起の見返りか?

 今回の日米首脳会談で、トランプ大統領は「安倍首相は軍用機・航空機・農産物など数千億円の製品を購入すると話した」と語ったという。

 
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拉致問題を提起する見返りに
日本は数千億円の製品を米国から買う!?
(2018年6月8日 ABCテレビ「羽鳥モーニングショー」より)

 これがトランプ大統領が「拉致問題北朝鮮に伝える」仕事の見返りなのかどうか、それはわからない

米朝会談を数日後にひかえて、状況は急変する可能性がある

 それはトランプ大統領北朝鮮金正恩朝鮮労働党委員長の性格が、ある面では非常に似通っているということに起因する。

 うまく二人の波長さえ合えば、米朝首脳会談は詰めの検討もなしにシャンシャンで終わるかもしれない。
 完全な非核化やミサイル廃棄が実現できようとできまいと。

 もしどこかにボタンの掛け違えが生じれば、それこそ一方か、あるいは双方が椅子を蹴って破談となるかもしれない。

 トランプ大統領金正恩委員長のやり取りを、恋人同士のやり取りと比喩したメディアがあったが、よくぞ言ったものだ。

 米朝首脳会談で「境界(休戦ライン)を無くして、お付き合いしましょう」とまとまれば、双方にとって会談は成功といえよう。非核化やミサイル破棄の話が具体化しなくても。

 米朝首脳会談まであと4日。

 トランプ流に、米朝首脳会談で「何が起きるか見てみよう」。