安倍首相の「トランプ氏の決断を支持する」発言は拙速だ


 ベトナムハノイで行われていた米朝首脳会談は誰も予想もしていなかった結果、「合意なし」に終わった。

 安倍首相はハノイから帰国途中のトランプ大統領と約10分間電話で会談をして、今回の米朝会談の説明を受けたという。

 その後の記者会見で安倍首相は、今回の米朝会談について「トランプ氏の決断を全面的に支持する」と述べた。

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2019年3月1日 ABCテレビ「羽鳥モーニングショー」より

 ハノイでの米朝会談が合意に至らなかった詳細はまだ明らかでないが、それよりも安倍首相がどこの国の指導者よりもいち早く上記のような発言をしたのは拙速ではないか、と思うのである。

 なぜなら、日本と北朝鮮の間には核・ミサイル問題のほかにより深刻な問題ー拉致問題という緊急に解決しなければならない課題がある。

 この会談でも拉致問題を取り上げたといわれるが、実際はどのようなやり取りがあったのか詳しくは報じられていない。

 拉致問題トランプ大統領に丸投げして、いかにも自分が真剣に取り組んでいると安倍首相がいくら演出しても何の効果もないことはシンガポールでの米朝会談でもわかっていたことだ。

 私が危惧するのは、今回の会談において「トランプ氏の決断を全面的に支持する」という安倍首相の発言によって北朝鮮が態度を硬化させるのではないか、いうことだ。

 拉致問題について安倍首相は「私自身が金委員長と向き合わなければいけないと決意している」と言うが、それには両者が向き合える環境整備が重要である。

 その環境をひっくり返すような発言を行ってトランプ氏に忖度したところで、拉致問題の解決にどのようなメリットがあるのか。

 一国の指導者は常に現状分析や洞察力、想像力、発想力などを駆使して発言や行動をしていかねば恥をかくこともある。

 安倍外交は稚拙だというのは、「金委員長と向き合って拉致問題を解決していかねばならない」と言っておきながら、その一方でその向き合う相手の心情を逆なでするようなことを安易に発言するといった矛盾した行動が見られるからである。

 仮にその発言内容が正しいとしても、今はそのような発言は心の中にしまっておくことも外交の心得であろう。