一茂も玉川もどちらも正論、SNSの不適切動画
次から次へとネットにアップされるファミレスやコンビニ店に勤める人間の悪ふざけの動画について、15日のABCテレビ「羽鳥慎一モーニングショー」でタレントの長嶋一茂氏とテレビ朝日の玉川徹氏が激論していた。
一茂氏は「お金があろうが無かろうが、承認欲求(筆者注:自己顕示欲のことか?)は誰にでもある。もし承認欲求を満たすのであれば、お金があってもやる」と言い、一方の玉川氏は「もっと根本的な原因があるんじゃないか」と反論した。
一茂氏の「量刑を重くして、罰則を施さないと」との発言に対し、玉川氏は「(そういうことをして)無くなる話なのかなと思いますね」と発言。
ヒートアップする二人の激論に羽鳥慎一アナが割って入ったが、どちらの言うことも正論である。
このような不適切な動画のネットへのアップ(ここではバイトテロと称していた)が起きる理由として、非正規労働者の賃金が低すぎるという意見がある一方では、賃金を上げても解決する問題ではないとする意見もあるという。
2019年2月15日 ABCテレビ「羽鳥モーニングショー」より
そしてネットでも一茂氏の主張する意見と玉川氏の意見の両方で二分されていることも確かだ。
そこで最近の非正規従業員の収入を聞いてみると、あまりにも安い賃金に驚くことがある。
ひと月の手にする収入が10万円に満たないときもあるという。
これでは生活が成り立たない。
ましてや将来の生活設計も描けない。
これから就職しようとする人たちも、できるだけ高収入が期待できる会社へ押しかけようとする。
その結果、低い賃金の会社の従業員採用に応募する人たちは少なくなり、求人不足が起きる。
2019年2月15日 ABCテレビ「羽鳥モーニングショー」より
一方で高い賃金を示した少数の大企業には求職者が押しかけて就職率がアップする。
そこでどうしてもある程度の数が欲しい会社は、低賃金でも応募してくる人たちをやむを得ず無選別に採用することになる。
その中には企業意識に乏しい人たちも紛れ込むかもしれない。
さらに賃金が低いとせっかく雇ったアルバイトが長続きしないということも起きる。
このような人たちが、会社組織の中で働くことはどういうことかをしっかり認識する訓練を成されていなければ、今回のような不適切な動画のネットへの投稿がどのような結果を招くのかを当人たちが予想することは困難だろう。
2019年2月15日 ABCテレビ「羽鳥モーニングショー」より
このような人物が、低賃金で自暴自棄になって今回のようなバイトテロを起こすことは容易に想像できる。
それは動画の中にあった「くびかくご」という文字でも明らかだ。
このような点においては、一茂氏が言う「量刑を重くして、罰則を施さないと」という説は正しい。
一方、低賃金で働く人たちの中には最初はまともな考えを持っていても、苦しい生活を続けるうちに次第に反道徳的な行動に陥ってしまう者もいるかもしれない。
それとは反対に、それなりの高い賃金で雇われた者は仕事においても生活においても心の余裕が生まれるのは確かであろう、必ずしでもないが。
それは職場や社会における道徳心やマナーを学ぶ余裕でもあるのだ。
玉川氏が言う「もっと違う根本的な原因」とは、ファミレスやコンビニ店に勤める非正規労働者の賃金が低すぎることにあるというこの点を指しているのではなかろうか。
世の中お金がすべてではない、という。
しかし、お金でなければ得られないものもある。
どんな人でも生きるための最低限のカロリーは肉体に必要だし、そのために必要な生活費が必要である。
今の日本の非正規労働の最低賃金は、生きるためにはぎりぎりの生活費のような気がしてならない。
アルバイト募集時の平均時給は今年1月時点で以下の通りである。
2019年2月15日 ABCテレビ「羽鳥モーニングショー」より
たとえばフード系のアルバイト従業員が8時間労働でひと月20日間働いたとすると、その収入は月15万円前後である。
ここから社会保険料などの種々税金や光熱費、家賃などを差し引けば手元に残るのはいかほどか。
たとえ年に数回であっても、旅行や観劇など心を癒す時間を持てばそれなりの費用が必要だ。
それらは健全な精神を育むためにも必要なことだ。
今の日本で生活するためには、たとえ非正規労働者であろうとも精神的にも余裕が生まれる賃金が必要であるのではないか、ということを痛感する。
あのスーパーボランティアの尾畠春夫さんは月5万5千円の年金だけで生活しているという。そこから電気代、ガス代、水道料金、ボランティアで現地へ行く車のガソリン代や維持費、固定資産税を払っているという。
だからというわけではない。
尾畠さんは戦中戦後の厳しく貧しい日本を過ごしてきた昔の人間。
厳しくとも毎日を明るく過ごしていける精神的な強さを持っている。
将来のある現代の若い人たちにそれを強要しても始まらない。