衆参ダブル選挙!?安倍首相のマッチポンプ手法


衆院解散にはちゃんとした大義が必要?

 永田町に解散風が吹いているという。

 最近の世論調査による内閣支持率の増加と野党の結束の乱れを考えれば、この時期に衆院を解散して衆参ダブル選挙を行った方が得策と安倍首相は考えているのだろう。

 ただ衆院の解散には大義が必要だ。

 10月の消費増税延期で国民の信を問う?

 いやいや財務相の顔を立てねばならないし、それに過去と同じようなことは恥ずかしくてできない。

 それでは解散の大義としてあとは何がある?

 それは後述する。


安倍首相は「2019年10月に消費税を10%に増税する」という火を点けた

 安倍首相は昨年、2019年10月に消費税率10%を実施すると昨年発表した。

 政府が発表する楽天的な景気指数は別にして、今のように景気の低迷時に
10%の消費増税を行えば消費行動がさらに冷え込むことは過去の例から明らかである。

 そして今後米中の貿易戦争が深刻になりつつあるということはより明白で、もし10月に消費税率10%を実施すれば、それは日本経済に「リーマンショック級の深刻な影響」を及ぼすことだろう。

 この「リーマンショック級の深刻な影響」はひょっとすると消費増税を延期する明確な理由になるかもしれない、今度は米国でなく日本発だけれど・・。


このままでは10%の消費増税が無くても日本経済は↓

 もし世界の情勢が現状より好転しなければ、10月の消費増税が実施されなくても景気の悪化は2020年の東京五輪パラリンピック後にかなりの確率で顕在化するであろうことが予想される。

 できることなら内閣支持率が良好なこの時期に衆参ダブル選挙を行いたい安倍首相は、今後の景気の悪化を理由に10月の消費増税を延期する理由とし、国民の信を問うために衆院を解散しようと一時は考えたのかもしれない。

 しかしながら、安倍政権下で消費増税の延期は今まで2度も行い、3度目は避けたいのが本音だろう。


●安倍首相の過去の消費増税延期の理由

理 由
  1回目(2015年10月)景気弾力条項に基づく「景気低迷のため」
  2回目(2016年6月)  新しい判断として「将来へのリスク回避」

 
消費増税を公約に含めると選挙は惨敗する

 過去の選挙で消費増税を掲げて選挙に勝った例はない。ならば「延期」あるいは「しない」とすることを公約として戦った方が明らかに有利である。

 そこで政府は明確な10月の消費増税の延期を発表せず、首相周辺の幹部らが消費増税の延期をにおわすことをマスコミに流す方法をとったのではないか、と思わせたのが萩生田官房副長官の10月の消費増税延期の発言だ。

 その目的は「国民の反応を見るため」と多くのディアが報じていた。

 ここで注意すべきは、政府が明確に消費増税の延期を発表したのではないということだ。

 それとなく延期の噂を流して、国民の間に次第に信じ込ませる、という手法を政府はとったのかもしれない

 首相周辺の幹部が口にしたということだけで「10月の消費増税は延期になるかもしれない」そして「延期になるだろう」という全く根拠のない期待を国民に抱かせたまま、衆参ダブル選挙に突入すれば今の状況(内閣支持率↑)では与党がボロ負けるすることはないだろう、と考えた。

 そしてダブル選挙の結果で自民党・与党が圧勝すれば10月の消費税
10%増税は予定通り実施されるだろう。

 このことは安倍首相がとってきた今までの手法とは若干異なる。

 すなわち、今度は根拠のない消費増税延期の情報をそれとなく流して、それに国民が淡い期待を寄せたところでダブル選挙を行うというものである。


国民に大きな負担を強いると見せかけ、選挙直前でそれを反故にする手法

 これまで安倍首相は、国民に最初は大きな負担を強いる政策を実施するように見せかけて、選挙の直前になると急に国民に媚びるようにそれらを延期あるいは撤回するという政策変更をしてきた。

 いわばマッチポンプのような手法を行ってきたのである。

 安倍首相は、できることなら今回もマッチポンプの手法に倣って3度目の消費増税延期をしたいと思っていただろう。
 
 しかし、3度も同じ手法を使うことは批判をまねく。それに安倍首相にとって消費増税は避けて通れない状況になっているからである。

 というのも今回ほど麻生財務相の顔を立てねばならぬときはないからである。

 そこで「延期するかも?」というフェイクニュースを流して選挙に突入するという賭けに出ようとしたのかもしれない。
 
 
変わってきた衆院解散の大義

 しかしながらここへきて、安倍首相は衆院を解散して国民の信を問う別の理由を考えたのかもしれない。

 「10月の10%消費増税実施」という火を点けたが、それは消さずに(ポンプを使わずに)済む方法を考えたのだ。

 それは17日の会見で記者の質問に答えた菅官房長官の発言である。

 菅官房長官は、「もし内閣不信任決議案が提出されたら衆院を解散するという大義になるのか」という記者の質問に対して「それは当然(解散の大義に)なるんじゃないですか」と否定しなかったことである。

 この場合だと解散の大義を「安倍内閣の信を問う」ことになって、10月の消費増税延期うんぬんに触れなくて済む。安倍政権にとっては「渡りに船」の質問だったかもしれない。

 しかし、どんなに小さな文字で書かれたものであろうと「消費税の10%増税」が公約にあるかぎり、選挙で惨敗する恐れは十分あるのだ。

 その際、安倍政権は国民の目から「消費増税」を覆い隠す小細工をしてくるかもしれない。
 

 現在の日本は10%の消費増税を実施するにはより厳しい状況になっている。


景気がより悪化するとしたら五輪後の数か月後

 もし10月の消費増税10%が施行されたとき、2020年の東京五輪パラリンピック後の日本経済がどのようになっているかを安倍首相は考えたことがあるのだろうか。

 リオ五輪の閉会式で安倍首相はスーパーマリオに扮して登場したが、米中の貿易摩擦にもまれている一国の首相が「東京五輪でもこの続き(スーパーマリオ)をどう演じるか、あるいはほかのキャラクターにするかどうかを模索している最中だ」なんて言ってもらっては困るのだ。