なぜ「池袋暴走」事故の加害者を容疑者と呼び始めたのか


 東京・池袋で母子2人が死亡し、10人が負傷した暴走事故の加害者が18日、都内の病院を退院して警視庁から任意の事情調査を受けて建物を出る姿を見たが、その際のマスクとサングラス姿には驚いた。

イメージ 1
2019年5月20日 ABCテレビ「羽鳥モーニングショー」より
 
 例え高齢であろうと、こんな姿でいくら被害者に「申し訳ない」と詫びたところで受け入れられるはずがない。

 謝罪するからにはそれなりの作法というものがあるだろう。

 加害者は両手に杖をついて、それこそおぼつかない足取りで歩いていたが、このような者が車を運転し、なおかつ周囲の者はそれを容認していたのかと思うと背筋が寒くなった。

 イメージ 2   イメージ 3
2019年5月20日 ABCテレビ「羽鳥モーニングショー」より
 
 この加害者を逮捕せずに任意で事情聴するという、今までと異なる警察の対応にも批判が集まったが、ここへきて池袋暴走事故は別の新たな展開を見せ始めた。

1)新聞が急に容疑者という呼称を使い始めた

5月19日付の読売新聞朝刊が、この加害者すなわち旧通産省工業技術院の飯塚幸三元院長に容疑者という呼称を付けて報道したことである。

イメージ 4
読売新聞 2019年5月19日付朝刊より
 
 この暴走事故が起きたとき、警察は加害者を逮捕せず、したがってマスコミは加害者を容疑者とはせずに元院長と報道した。

 そのことに多くの批判が集まったが、19日の読売新聞は突如、飯塚元院長を「容疑者」として報道し始めたのである。

 私としては、このような悲惨な事故を起こした人物をどういう理由があれ(たとえ高齢者であろうと)、容疑者と呼ぶことに異存はない。

 しかし、なぜ読売新聞は飯塚元院長を急に容疑者扱いにしたのであろうか。


2)過去に同じ車種が同じような事故を起こしている

 退院した飯塚元院長は今でも事故を起こした理由を「アクセルペタルが戻らなかった」と操作ミスを否定しているという。

 警視庁は7日、メーカーの担当者とともにアクセルなどを調べたが「異常はなかった」と結論付けているにもかかわらずである。

 テレビ画面に映し出されるおぼつかない足取りをした飯塚元院長を目にすれば、操作ミスは大いにありうると私たちは思ってしまう。

 こういう情報がある。

 池袋暴走と同じ車が2016年12月に福岡で似たような衝突事故を起こしている。

 また2017年10月にも東京・吉祥寺駅前で85歳の男性が運転する車が暴走してけが人が出た。

 福岡の事故では運転手はペタルの踏み間違いを強く否定していた。


 両手に杖を持ち、階段のわずかな段差にも足を載せることのできない飯塚元院長の姿を見た時、今回の事故は運転操作ミスだと誇張するような演出を感じたのは私だけであろうか。

 なぜならば、今回の事故による後遺症も幾分あるかもしれないが、飯塚元院長が暴走を起こす前にこのような状態であれば車のステップにさえ足も載せられないだろう。

 ましてやサイドブレーキをかけたり、ブレーキペタルやアクセルペタルを小刻みに、そして頻繁に踏み込むことさえ困難であろう。
 

 新聞が池袋暴走事故の加害者を急に容疑者と変えた、なぜだろうか。

 悲惨な事故を起こした飯塚元院長の罪は許し難いものである。
 高齢だということが免罪符になるような世の中になってほしくない。

 暴走の原因を、判断と運動能力が衰えた高齢者だったという一言で片づけられてしまうことに危惧を抱く。
 
 この事故の原因はほかに全く無いのだろうか。
 
 未だ逮捕もされていないのに、急に飯塚元院長を容疑者と呼び始めたことに奇妙さを覚えるのである。