こういうことが政治不信を招く
相変わらずの国会
与党の質疑内容はその多くが政権サイドの提灯持ちであって、ときに「オッ、痛いところを突くじゃないか」と思っていると、実は閣僚たちに弁明の機会を与えているに過ぎなかったりする。
一方の野党は、と見ていると追求の詰めが甘い。せっかくいい材料を取り上げているのに、結局中途半端な追求に終わってそれを観ている国民は消化不良に陥る。
国会論戦は歌舞伎の顔見世興行じゃないんだから、時間がきたらハイッ終わり、というものではなかろう。
少し前の国会(17日)であるが、この日も野党の質疑を嫌って尋ねもしないことを長々と答弁(これは答弁とはいわないかも)する閣僚が居た。
相手の質問時間を減らしたいわけである。いくら相手が嫌いな政党の質問者であったとしても、こんな子供じみた行為は見ていて不快だ。
そのたびに委員長席に一部の野党委員が集まってしばしば審議が中断する。
中にはこんな質疑もある
そんな中、おやっ、と思う質疑が野党の委員からあった。
まれではあるがキラリと光る質疑である。
今では全国ニュースでも取り上げられているが、国有地が不当に安い価格で学校法人に払い下げられ、その取得経過も定かではない、という件である。
この学校法人は安倍首相夫妻と親密な関係を持ち、この4月に開校する予定の小学校の名誉校長は安倍昭恵夫人だというのである。
国会で安倍首相は土地価格に関わりはなく、小学校名については断ったと答弁した。
この際、この学校法人と安倍首相の関わりについては今はどうでもいい。
問題は別にある。
それは後述する。
小学校用地の一部では環境基準を越える鉛、砒素も検出されたという。
どちらも地中に障害となる物質(以下障害物という)があるという点では同じ。
豊洲新市場も小学校も、取得した地中に資産価格を下げる障害物が見つかって、それらを取り除くあるいは浄化するコストが発生したという点ではまったく同じ構図である。
地中の障害物がどの深さまであったのか、その量はどのくらいか、そして買い手と売り手のどちらが除去や浄化のコストを持ったのか、その期間など、一つひとつの要因をどのように取り扱うかによって譲渡価格が微妙に変わる。
逆に言えば、譲渡価格を作為的に変えようと思えば、これら埋蔵物の質や量、埋まっている深さなどを操作すればいいわけである。
豊洲新市場のほうは都議会で百条委員会の設置が決まって、いずれ真相が明らかにされるだろう。
9億円以上の国有地が1億余円!
豊中市の小学校用地は土中に多くの障害物があってそれをすべて除去するための費用が8億円以上もかかるということで、その分をディスカウントしてわずか1億余円で学校法人に払い下げられたという。
9億円以上の国有地がわずか1億余円ですよ。
最初、学園側はこの国有地を借りる予定でいたという。しかし土中に廃材などの障害物があることがわかり、国は学園側が自身で障害物を除去するならば1億余円で売却しましょう、という話になったらしい。
障害物とは何か、どのくらいの深さに埋まっているのか、その除去作業を国ではなく売却先に丸投げしたのはなぜか、そのあたりの経過もはっきりしない。
小学校はこの春に開校するらしいがすべての障害物は除去されたのか。
本当に障害物があったのか、あったとすればどのくらいの量がどの程度の深さで埋まっていたのか、毒性のある物質は無かったのか、何ひとつはっきりしない。
ある情報によれば、埋まっている障害物はトラック4000台分とも言われているらしい。野党議員が現地で調べたところ、そのような大工事があったとは到底思えない、という近隣住民の声もある。
この4月にこの小学校は開校の予定であるという。
安倍首相はこの質疑の応答で「(こういう質疑は)小学校に通う子供たちもいるのだから慎重に」と言った。
ならば「8億余の金をかけて障害物はすべて取り除きました」ということを学校法人側が世間に対して早急に明らかにするのが先ではないか。
国民の大事な資産が特定の業者に不当に安く売られたかもしれないこういう事案は、貴重な国家予算の正当な使い方に真っ向から背くものである。