希望の党の公約「内部留保課税」の方向は正しい

イメージ 1
10月6日 ABCテレビ 「羽鳥モーニングショー」 より

 希望の党が発表した衆院選挙の公約の中で、消費税の凍結に代わる財源として、大企業の内部留保に対して課税するという方向を打ち出したのは正しいことだ思う。

 自民党から「課題が多い」とか「大衆受けを狙った」、そして「二重課税だ」などの批判が出ているが、自民党内でも一時はその内部留保課税について議論したことがあったのではないか。
 
大衆受けする公約で構わない、実行してくれれば

 選挙の時の公約など、言葉は悪いがその多くが大衆受けを狙っているものだ。

 それは一部の者(ここでは大企業と財界と、そしてそれらとしがらみのある政治家など)を除いて、多くの国民がその恩恵を受けるような公約であるから有権者には非常に受け入れやすいのだ。

本気で公約を実行する政治家を見抜くこと

 問題はその公約を政党や政治家が本当に実行する気があるのかどうかである。

 当選するためだけの、その場限りの公約であれば、それは「大衆受け」だけを狙った、と言えるだろう。
 
 政治家に公約を本当に実行する気があるのかどうか、それは有権者が見極めることだが、その判断はその政党や政治家の今までの言動やふるまいに誠実さがともなっていたかどうかで左右されるだろう。

パフォーマンスだけでは経済や景気は上向かない

 今まで安倍政権下で行われた景気刺激策における国民の消費動向はどうだったろうか。

 プレミアム商品券など国民の消費行動を刺激するようなことを行ったが効果はなかった。
 それどころか、これらは一部の地方役人や一癖ありそうな政治家の懐を潤しただけで終わった。

 また今年2月、「プレミアムフライデー」という個人消費喚起キャンペーンを経済産業省経団連が主導して始まったが、プレミアムフライデー推進協議会事務局が全国の正社員・非正規社員に行ったアンケート結果では、15時に退社をしたという人は全体の4%だったのである。

 どんなに周囲(政府・経済界)がはやし立てても思うような消費行動に結び付かない。

 なぜなのか。それは民間事業所で働く労働者(5441万人)のうち実に約4割(2018万人)が非正規社員であることに起因する(数字は総務省統計局労働力調査速報2017年4~6月平均による)。

  そして正規と非正規社員との間の2016年の年間の平均賃金格差が315万円で、4年連続格差が広がっていることがわかった(国税庁民間給与実態統計調査)。このことから言えることは、非正規社員の購買意欲は正規社員と比べ落ちてしまうことは明白であるということだ。

 それは大企業が非正規社員を極端に安い賃金で働かせて得たその儲けを労働者に分配することなく、いろいろな理由を付けて内部留保に回していることが大きな原因であろう。
 
 大企業の内部留保は平成28年度で400兆円を超えている(財務省法人企業統計による)。

 第二次安倍政権が発足した平成24年度と比べて、平成28年度の企業の内部留保は100兆円増えたのに対し、人件費は5兆円ほどしか増えていないのである(財務省の法人企業統計)。
 政府がもっと賃金アップを、と大企業にお願いしたにもかかわらず、実態は儲けた分のほとんどが内部留保に回っているのである。

 政府が笛吹けど、大企業は踊らず。

 でも政府はかけ声だけでフォローはなし。

 こんなことではいつまでたっても消費が回復することはないだろう。

 そうであればここは法律で企業の内部留保に課税して、過大な儲け分を賃金アップに回すほかないだろう。
 
内部留保課税」ははたして二重課税か?

 麻生財務大臣はこの希望の党の「内部留保課税」公約について、「二重課税」になると批判しているが冗談じゃない。では今まで私たちが「二重課税じゃないのか」と言ってきた、ガソリン購入の際の消費税はどうなんだ、と言いたい。
 
 ガソリン価格はその本体価格に石油税とガソリン税暫定税率と本則税率)がすでに含まれていて、これらの価格にさらに消費税がかけられているのである。

 石油税とガソリン税はガソリンを製造するためにかかるコストを上乗せしているだけだからこれは二重課税ではないという説がある。

 それならば企業活動に必要な経費(人件費や設備資など)を除いて企業に課税されている現在の状況はガソリンの製造コストと同じで、これはいわば企業が活動するための製造コストと同じではないか。それにしたがえば内部留保課税は必ずしも二重課税だとは言えまい。

 もし麻生財務大臣が「内部留保課税」は二重課税だと強弁するのなら、車の購入の際に自動車取得税と消費税の両方をとられる現状についても言及してもらわねばならない。

地に足を着けた政策が必要

 いずれにしろ、景気が上向いてきたと数字や統計だけではなく、国民の多くが肌で実感できる、地に足を着けた政策を本気でやってくれる政治家が今必要なのである。