通算25回目の日露首脳会談で安倍首相を「君」と呼んだプーチン大統領


 1月22日にモスクワで行われた安倍首相とプーチン大統領の日露首脳会談は何の成果もなかった、というよりさらに厳しい現実をロシア側から突き付けられたということにつきよう。

 北方領土の「ほ」や「り」の言葉さえも一切無かったこの会談の目的は何だったのだろうか。

 安倍首相はこの会談を「前進」「進展」と位置付けたが、何のことはない昨年シンガポールプーチン大統領と会談した時に1956年の日ソ共同宣言を基礎にして平和条約締結を加速させよう、と安倍首相が提案したことで北方四島の返還はむしろ後退したことが22日の首脳会談でより明確になったと言えるのではないか。

 しかし、こういうことも考えられる。

 この6月に大阪でG20が開かれるが、その際に安倍首相とプーチン大統領の会談が予定されており、そこで北方領土問題で多少進展した内容を日本国民に対して発表をするのではないかということである。

 今、発表するのでは日本世論に対してインパクトがない。

 わざとずらして時期を探る、というのがこれまでの安倍官邸のやり方である。

 このモスクワでの日露会談は成果がなかったように装って、6月の日露会談では少しだけ進展した内容を発表することで日本国民に対してより成果があったように見せつけることが出来る、と官邸は考えているのではないか。

 その理由は、7月に参議院銀選挙を控えているから、というのは深読み過ぎるか。

 しかしながら、仮に安倍首相とプーチン大統領の日露首脳会談で進展したと言っても決しておいしい内容ではあるまい。

 今の状況ではロシアが4島返還どころか2島さえも日本に返還する気など全くない、と思われるからである。

 おそらくプーチン大統領は島の返還をちらつかせて、日本からの経済支援を引き出す日露平和条約の締結を厳しく迫ることだろう。

 日本との平和条約の締結を優先させる手法にあらゆる手を使ってくるのが今のロシアである。

 ロシアに対する経済封鎖に加わったG7の一角である日本を落とせば、活路が見いだせることをプーチン大統領は確信しているはずである。

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 ところで1月22日のモスクワでの首脳会談の初頭に、プーチン大統領は安倍首相に対して「君」と呼びかけたそうである。

 一般的に日本で使われる「君」は目下の者を指して使う言葉である。同格であれば相手の「名前」か「あなた」を使う。

 相手が上位であれば「肩書」を使うのが普通である。

 会社でも上司に対しては「肩書」か、「名前+敬称」で呼ぶはずだ。

 部下に対しては「君」や「〇〇君」あるいは「〇〇」と名前の呼び捨てもあろう。

 親しい仲間同士では「お前」と呼ぶこともあろう。関西では「自分」という言葉を使う様である。

 同格あるいはそれ以下の相手から「君」呼ばわりされて気分を害した人が多いのも事実である。

 プーチン大統領は安倍首相のことを「君」と言ったのは果たしてどういうつもりだったのか。

 日本において、古くは偉い人に対して「君」を付けた時代もあったそうだがプーチン大統領がそんな日本の昔のことを知っているとは思えない。

 それとも日本における「君」の使い方は昔も今も同じだとプーチン大統領が勘違いしたのだろうか。

 モスクワの首脳会談で「君」呼ばわりされた安倍首相、どんな気持ちだったのだろうか。

 そのことが一切報じられていないのが残念である。

 プーチン大統領が安倍首相を「君」と呼んだ真の理由は、今後北方領土問題がどのような決着になるかを知った時に初めてわかることになるのかもしれない。